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ブッシュ大統領の2009年度予算:概要(その3)
NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2008年3月16日
このレポートでは、今年50周年を迎える米航空宇宙局(注:1)
、インフレ調整した実質の研究開発(R&D)予算が2007年度をピークに減少している国防省、2003年の創設以来僅か数年間で連邦政府の第7番目のR&D支援機関に成長したものの、有効な予算消化が出来ず、未だにR&D活動の再編が続いている国土安全保障省、1998年からの5年間で予算倍増を達成した後、予算の横ばい状態が続いている厚生省の国立衛生研究所、および、省庁間プログラムの予算について概説する。
■ VII. 米航空宇宙局
米航空宇宙局(NASA)の2009年度予算は、2008年度予算(171億1,690万ドル)を4億9,730万ドル(2.9%)上回る176億1,420万ドル(注:2)
。2009年度予算では、次世代有人宇宙船を開発する「コンスタレーション・システム」プログラム、および、2010年完成に向けて建設が加速化する国際宇宙基地(International
Space Station =
ISS)プログラムという二大有人宇宙計画が各々、前年度比23.3%(5億7,600万ドル増)、13.6%(2億4,700万ドル増)という大幅増額を受ける一方で、NASAの研究志向プログラムは再度の縮小に直面している。
NASA実質R&D予算の推移:1995年度−2009年度
(単位:2008年度恒常ドルベースの100万ドル)

(出典:全米科学振興協会(AAAS)作成の"Trends
in NASA R&D, FY
1995-2009")
NASAの研究開発(R&D)予算は、前年度より3億100万ドル(2.9%)増えて107億3,700万ドルまで引き上げられるものの、増額対象は開発費(前年度比5.4%増)と施設・設備費(13.2%増)であって、基礎研究と応用研究は各々9.1%と5.6%の削減となっている。

NASA予算のハイライト:
1. 科学ミッション部門(Science Mission
Directorate)の2009年度要求額は、前年度比5.6%(2億6,470万ドル)減の44億4,150万ドル。(1)「地球科学(Earth
Science)」;(2)「宇宙科学(Planetary
Science)」;(3)「天体物理学(Astrophysics)」;(4)「太陽物理学(Heliophysics)」という4テーマの主要プログラムは下記の通り:
(1)「地球科学」の2009年度予算は、前年度を8,720万ドル(6.8%)上回る13億6,750万ドル。
- 地球体系的ミッション(Earth Systematic
Missions)プログラムの予算は27.9%(1億4,780万ドル)増の6億7,790万ドル
…(i)日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)他との共同事業である全球降水測量(Global
Precipitation
Measurement)プロジェクトが7,440万ドル→1億2,580万ドル;(ii)10ヵ年調査(Decadal
Survey)ミッションは3,300万ドル→1億320万ドル;(iii)国立海洋大気局(NOAA)と米国空軍との共同で環境観測を行うNPOESS
Preparatory
Projectは7,000万ドル→9,440万ドルへ増額される一方、(iv)エアロゾルの分布を測定するGlory
Missionが3,520万ドル→2,970万ドル;(v)海面地形(Ocean
Surface
Topography)ミッションも2,750万ドル→800万ドルに削減される。
- 米国グローバルチェンジ研究計画(U.S. Global Change
Research Program)と気候変動研究イニシアティブ(Climate
Change Research
Initiative)の重要な構成要素である地球科学研究(Earth
Science
Research)プログラムの予算は微増(1.3%増)で3億8,060万ドルに引き上げ。
- 地球構造学パスファインダー(Earth System Science
Pathfinder)プログラムの予算は2,520万ドル(22.1%)削減されて8,860万ドル
…(i)炭素観測衛星(Orbiting Carbon
Observatory)プロジェクトは3,560万ドル→2,540万ドルに増額;(ii)全球水循環と海洋循環および気候の関連性を調査するアクエリアスプロジェクトは4,860万ドル→3,380万ドルに削減。
(2)「宇宙科学」の予算は、2008年度比6.9%(8,670万ドル)増の13億3,420万ドル。
- 宇宙科学研究(Planetary Science
Research)プログラムの予算は前年度比11.9%増の2億7,080万ドル
…(i)宇宙科学研究分析が1億2,780万ドル→1億4,240万ドル;(ii)月科学研究が2,270万ドル→1億500万ドルに増額される一方、(iii)教育および部門管理の予算は7,240万ドル→390万ドルへの大幅削減となる。
- 火星探査プログラムの予算は昨年に続く減少で、前年度比30.2%減の3億8,650万ドル
…(i)火星科学ラボ(Mars Science
Laboratory)プロジェクトが3億550万ドル→2億2,330万ドル;(ii)火星研究・分析も2,740万ドル→2,490万ドルに減少。
- Discoveryプログラムの2009年度予算は9,400万ドル増額されて2億4,700万ドル
…(i)2011年打ち上げ予定のグレイル(月重力観測・内部構造研究:GRAIL)ミッションに新規で1億2,240万ドル;(ii)月面鉱物マッパー(Moon
Mineralogy
Mapper)が260万ドル→270万ドル;(iii)Discovery
研究が1,000万ドル→1,880万ドルに伸びる反面、(iv)Discovery
Futureは1億390万ドル→5,040万ドルに削減される。
(3)「天体物理学」は前年度より1億7,500万ドル(13.1%)削減の11億6,250万ドル。
- 天体物理学研究の予算は5,010万ドル(49.0%)増額されて1億5,230万ドル
- 宇宙起源の予算は16.5%(1億3,290万ドル)減の6億7,440万ドル
…(i)ハッブル宇宙望遠鏡は昨年に続く削減で2億2,850ドル→1億5,490万ドル;(ii)昨年増額となったジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡も4億4,830万ドル→3億7,190万ドルに削減される。
- 太陽系外惑星の2009年度予算は1億1,450万ドルの大幅削減で…(i)宇宙干渉計(Space
Interferometer)ミッションを廃止;(ii)ケプラーミッションは7,890万→2,520万ドルに縮小。
(4)「太陽物理学」の2009年度予算は4,810万ドルで、前年度より2億6,360万ドルの大幅削減。
- Living with a
Sunプログラムは前年度比3.1%(670万ドル)の微増で2億2,380万ドル
…(i)放射線帯嵐探査機(Radiation Belt Storm
Probes)プロジェクトが7,770万ドル→1億5,440万ドルに増額となる反面、(ii)ソーラーダイナミクス観測(Solar
Dynamics
Observatory)プロジェクトは9,000万ドル→2,410万ドルに削減され;(iii)太陽探査機(Solar
Probe)はゼロ要求となっている。
- 太陽地球系探査(Solar Terrestrial
Probes)の予算は1億590万ドルから1億2,310万ドルに増額。
- 深宇宙探査ミッションシステム(Deep Space Mission
System)、および、近地球ネットワーク(Near Earth
Networks)プログラムは、宇宙活動ミッション部門へ移管される。
2. 航空学ミッション部門(Aeronautics Mission
Directorate)の予算は2年連続の減額で、2008年度予算を6,520万ドル(12.7%)下回る4億4,650万ドル。(i)最新航空機および未来航空機の安全技術向上を目的とする航法安全(Aviation
Safety)プログラム(6,650万ドル→6,260万ドル);(ii)国家空域における安全かつ効率的な航空交通管理システムに必要な革新的R&D解決策を開発する航空路システム(Airspace
Systems)プログラム(1億10万ドル→7,560万ドル);(iii)風洞テスト施設や飛行試験場といった実験施設を常に利用可能なように整備管理する航空テスト(Aeronautics
Test)プログラム(7,510万ドル→7,390万ドル);(iv)基礎航空学(Fundamental
Aeronautics)プログラム(2億6,990万ドル→2億3,540万ドル)が軒並み削減となっている。
3. 探査システムミッション部門(Exploration Systems
Mission
Directorate)の予算は、2008年度比11.4%(3億5,740万ドル)増の35億50万ドル。(1)次世代有人宇宙船を開発する「コンスタレーション・システム(Constellation
Systems)」と(2)「先進能力(Advanced
Capabilities)」の主要プロジェクトは下記の通り:
(1)「コンスタレーション・システム」の予算は2008年度比23.3%(5億7,630万ドル)増で30億4,820万ドル。
- コンスタレーション・システム・プログラムの予算は28億7,510万ドル(前年度比5億3,370万ドル増)
…(i)有人宇宙探査船(Crew Exploration
Vehicle)プロジェクトは7億7,570万ドル→11億140万ドル;(ii)クルー・ローンチ・ビーイクル(Crew
Launch
Vehicle)プロジェクト予算は9億9,920万ドル→10億1,850万ドル;(iii)プログラム統合・運営が5億3,080万ドル→7億4,820万ドルと全て増額要求。
- COTS(Commercial Orbital Transportation
Services)の2009年度予算は、4,250万ドル引き上げられて1億7,300万ドル。
(2)「先進能力」の予算は再度の削減となり、前年度比32.6%(2億1,880万ドル)減の4億5,230万ドル。
- 将来の有人およびロボット探査ミッションを可能にすると同時にミッションのリスクとコストを削減する新技術を開発する探査技術開発プログラムは8,190万ドル減額の2億4,410万ドル。
- 無人月探査計画のLPRP(Lunar Precursor Robotic
Program)予算は1億4,190万ドルの大幅削減を受け、5,630万ドルまで引き下げ。
- 有人宇宙探査の実施に必要不可能となる対応策や知識、技術やツール等を開発する人間リサーチプログラムの予算は3.4%の増額で1億5,190万ドル。
4. 宇宙活動ミッション部門(Space Operations Mission
Directorate)の要求額は、2008年度比4.4%(2億4,550万ドル)増額の57億7,470万ドル。同部門の3テーマの予算は下記の通り:
(1)「国際宇宙基地(ISS)」の2009年度予算は22億3,860万ドルで、前年度要求より4億7,600万ドル(27.0%)という大幅増額となっている。
(2)2010年度のISS組立終了まで11回のスペースシャトル打ち上げ、および、ハッブル宇宙望遠鏡の保守ミッション1回を予定している「スペースシャトル」の2009年度予算は2億8,500万ドル削減され、29億8,170万ドル。
(3)「宇宙・フライト支援」の予算は、科学ミッション部門の「太陽物理学」プログラムから深宇宙探査ミッションシステムと近地球ネットワークが同テーマに移譲されることを反映して、2008年度比64.2%(2億8,650万ドル)増の7億3,280万ドル。
5.
将来のNASA職員育成を念頭に置いて、多様な理工系数学(STEM)分野でのイニシアティブを支援する「教育」予算は昨年度まで省内支援プログラム部門の一環であったが、省内再編により、教育部門(Education
Directorate)として独立する。2009年度予算は、前年度より3,120万ドル少ない1億1,560万ドル。
- 初等中等教育(2,380万ドル→3,210万ドル)、E-教育事業(580万ドル→680万ドル)、MUREP(Minority
University and Research
Program:2,750万ドル→2,810万ドル)、および、高等教育(900万ドル→950万ドル)が僅かづつながら増額となる一方、EPSCoR(1,280万ドル→830万ドル)とNASA宇宙グラント(3,570万ドル→2,870万ドル)が減額される。また、議会指定のプログラムである、教育競争グラント計画(Competitive
Educational Grant
Program)と地球気候変動教育(Global Climate Change
Education)は撤廃要求となっている。
6. 省内支援プログラム部門(Cross-Agency Support
Programs)の予算は、2008年度よりも1.8%(5,700万ドル)の微増となり、32億9,990万ドル。同部門は、「センターの管理運営」;「NASAの管理運営」;「機関投資(Institutional
Investments)」;「議会指定プロジェクト(Congressional
Projects)」の4テーマに再編された。その内の「NASAの管理運営」テーマの主なプログラムは下記の通り:
(1)「NASAの管理運営」予算は、1億1,540万ドル増額されて9億4,560万ドル。
- 革新的パートナーシップ計画(IPP)は前年度比19.7%増の1億7,570万ドル
…(i)中小企業革新研究(SBIR)が1億370万ドル→1億1,790万ドル;(ii)中小企業技術移転計画(STTR)は1,250万ドル→1,410万ドル;(iii)パートナーシップ開発(Partnership
Development)が2,120万ドル→2,410万ドルの増額要求となっているほか、(iv)将来の百周年チャレンジ(Future
Centennial Challenges)および投資シーズ基金(Investment
Seed
Fund)を新設して、各400万ドルを計上することが提案されている。
■ VIII. 国防省
国防省の2009年度自由裁量予算は2008年度予算(4,795億810万ドル)を7.5%上回る5,154億3,990万ドル。国防省予算は、地球規模の対テロ戦争における勝利;地上戦闘能力の強化;臨戦体勢の向上;将来の脅威に対応するために必要な戦闘能力の開発;軍人・家族のクオリティ・オブ・ライフの向上、という大統領コミットメントを反映した内容となっており、増額分(359億3,180万ドル)の24%にあたる87億ドルが地上戦闘能力の強化に充てられるほか、臨戦体勢の向上が79億ドル(増額の22%);将来の戦闘能力開発が105億ドル(29%);クオリティ・オブ・ライフの向上が89億ドル(25%)を受けることになる。
国防省では次世代兵器に対して記録的な投資を行っており、2009年度にはR&D予算として804億9,400万ドル(前年度比0.4%増)を要求している。しかしながら、約805億ドルというR&D予算も、インフレ調整後の実質ベースでは2007年度の記録的予算には及ばないことになる。R&D予算を軍別に見ると、海軍(前年度比8.6%増)、空軍(7.7%増)、および、防衛先端研究局(Defense
Advanced Research Projects Agency =
DARPA)を始めとする国防関連機関(3.9%増)が増額を受ける反面、陸軍は2008年度比12.6%(15億2,050万ドル)の削減要求となっている。ブッシュ政権は過去5年間連続で基礎研究の予算削減を要求してきたが、2009年度には予想外にも、国防省の基礎研究予算を6,500万ドル(4.0%)増額して16億9,900万ドルまで引き上げている。一方、応用研究は6年連続の削減を被り、42億4,500万ドル(前年度比16.1%減)(注:3)
まで減額されるが、これは主として2008年度に議会が指定交付した8億4,000万ドルが排除されたことに起因している。これに対し、開発予算と施設・設備予算は各々、1.4%と10.6%の増額を受けている。国防省R&D予算の内訳は下記の通り:

国防省予算のハイライト
1.
防衛先端研究局(DARPA)の予算は2008年度(29億5,900万ドル)を3億2,650万ドル(11.0%)上回る32億8,600万ドル。
(1)基礎研究を支援する防衛研究科学(Defense Research
Sciences)の予算は昨年度に続く増額で、1億9,570万ドル(前年度比11.8%増)。
(2)DARPAの応用研究予算は2,220万ドル(1.7%)増額されて13億3,380万ドル。内訳は、@情報通信技術(+2,360万ドル);A戦術的技術(Tactical
Technology:+3,550万ドル);Bエレクトニクス技術(+1,480万ドル)が増額となる一方、C認知(cognitive)コンピューティングシステム(-2,940万ドル);D生物兵器防衛(-580万ドル);E材料技術とバイオ技術(-1,650万ドル)が削減されている。
(3)先端技術開発の予算も2009年度には増額され、14億2,400万ドルから16億2,540万ドルに引き上げられる。昨年は4プログラム(注:4)
を除いた全プログラムが削減要求となった先端技術開発予算であるが、2009年度予算では、@先端エレクトロニクス技術(-180万ドル)とAガイダンス技術(-1,440万ドル)の2プログラムが削減されて、B陸上戦技術(Land
Warfare
Technology)が廃止となる他は、C先端航空宇宙システム(+3,590万ドル);D宇宙プログラムと技術(+7,060万ドル);E指令・制御・通信システム(Command,
Control and Communications
Systems:+8,370万ドル);FDARPA機密プログラム(+970万ドル);Gネットワーク中心戦闘技術(+610万ドル);Hセンサー技術(+3,130万ドル)の全てが増額要求となっている。
2.
ブッシュ政権の最優先プロジェクトの一つであるミサイル防衛計画を管轄するミサイル防護庁(Missile
Defense Agency = MDA)?
ブッシュ政権の最優先プロジェクトの一つであるミサイル防衛計画を管轄するミサイル防護庁(Missile
Defense Agency = MDA)(注:5)
の予算は、2008年度より3億3,860万ドル多い88億9,070万ドル。
3.
大量破壊兵器に対抗する科学や技術を確認・実施する、防衛脅威削減局(Defense
Threat Reduction
Agency)の2009年度予算は前年度並みの4億5,600万ドル。
4.
国防に不可欠な基礎科学・工学研究・関連教育を実施する大学の能力向上を目的とする大学研究イニシアティブの2009年度予算は、2008年度比2.1%増額の3億660万ドル。軍別では、陸軍の予算が6.6%削減の7,700万ドル。一方、海軍は5.8%増の1億370万ドルで、空軍も5.0%増の1億2,590万ドル。
5. 次世代戦闘機(Joint Strike Fighter
=JSF)のRDT&E予算は、38億5,960万ドルから30億5,670万ドルに削減。軍別では、空軍のJSF予算が19億9,150万ドルから15億2,400万ドルに、海軍が18億6,800万ドルから15億3,270万ドルに減額される。
6. 化学・生物兵器防衛計画(Chemical and Biological
Defense
Program)の予算は、2008年度を3,860万ドル(3.8%)上回る10億5,590万ドル。
7.
国家防衛にとっての重要分野において、米国高等教育機関の研究能力および科学者やエンジニア育成能力の向上を支援する防衛EPSCoR計画予算は280万ドルで、1,410万ドルという大幅削減となる。
8.
ブッシュ政権が2007年度および2008年度に廃止提案を行ったものの、米国議会が再度にわたって同廃止案を覆している、政府・産業界の大学研究共同スポンサーシップ(Government/Industry
Cosponsorship of University Research
)は、2009年度予算でもまた、廃止が要求されている。
9.
省庁間プログラムであるネットワーキング・情報技術R&D(NITRD)に対する国防省の2009年度投資は、ブッシュ政権が発足した2001年度予算の約3倍にあたる12億3,700万ドル。但し、前年度比では1,300万ドルの減額となる。
10.
国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)に対する国防省投資は、前年度より5,600万ドル(11.5%)少ない4億3,100万ドル。但し、米国議会が2008年度の国防省NNI予算に盛り込んだ1億1,200万ドルという指定交付予算を差し引くと、2009年度要求額は14.9%の増額となる。
11. 国防省全体の技術移転(Defense-wide Technology
Transfer)は昨年に続く削減要求で、580万ドルから220万ドルに引き下げられる。
■ IX. 国土安全保障省
国土安全保障省(Department of Homeland Security =
DHS)の2009年度全体予算は2008年度予算比6.8%増の505億ドル、自由裁量予算は7.7%増の376億となっている。DHSのR&D予算は32億8,700万ドルで、前年度比の約3倍という大幅増額になっているが、これは、ブッシュ政権がProject
Bioshield調達費の21億7,500万ドルを「施設・設備」予算として算出しているためであって、この調達予算を差し引くと、2009年度R&D予算は前年度比2.7%(3,100万ドル)の削減に転じることになる。同省R&D予算の内訳は下記の通り:

DHSのR&D予算ハイライト:
1. 科学技術部(Science and Technology
Directorate)は、連邦政府や州・地方政府担当官、および、部族政府や米国領土の担当官に、万難や国土安全保障上の脅威の効果的かつ効率的な防止、防御、および、それらからの復興に必要となる最新鋭技術他の資源を提供することをミッションとして、2003年度に設置された。科学技術部は、2006年度まで大幅な予算増額を受けた一方で、スタッフ雇用・予算消化・能力強化に苦闘している。明白な研究目標や詳細な予算情報を欠き、過去の計上予算を消化できずにいた同部は、議会で厳しい批判を受け、2007年度には大幅な予算削減、そして、2008年度にも僅かながら減額を被っている。科学技術部の2009年度全体予算は、前年度比4.6%(3,850万ドル)増の8億6,880万ドル、この内の7億3,670万ドル(前年度比6.5%増)がR&D予算となっている。科学技術部のR&D担当6課4室への予算配分は下記の通り:

(1)国境と海事の予算は前年度より980万ドルの増額。増額分の内の500万ドルは、米国沿岸警備隊、税関国境警備局、移民税関捜査局、および、海洋環境で活動するその他機関に技術を提供するプログラムに充当され、残りの480万ドルは、DHSの国境安全・貨物安全担当チームが確認した能力ギャップを埋める技術を提供するプログラムに配分される。
(2)自爆テロ犯や自動車に載せた簡易爆発物(Vehicle-Borne
IED)を検出して対応する技術を開発する為の基礎科学原理に焦点をあてる、爆発物担当課の予算は1,850万ドル増額で9,610万ドル。
(3)研究所施設と大学プログラムを支援する研究担当部長室の予算は、前年度よりも4,310万ドルの増額。内訳は下記の通り:
- 研究所施設の予算は4,300万ドル増額で1億4,690万。増額分の内、1,620ドルは国立バイオ兵器防衛対応センター(National
Biodefense Analysis and Countermeasures
Center)の運転開始;1,290万ドルが国立生物農産物検疫施設(National
Bio-and Agro Defense
Facility)の建設準備;残りの1,400万ドルはDHS本部ビル以外で働くS&T関連職員の給与やベネフィットに充当される。
- 国土安全保障優良センター(HC-Center of
Excellence)(注:6)
を支援する大学プログラムの予算は550万ドル削減されて4,380万ドル。
(4)国土安全保障問題に対応するブレークスルー技術や革新的アプローチの開発を目指す、イノベーション担当部長室の予算は、前年度比36.4%(1,200万ドル)増の4,500万ドル。
2. 科学技術部から2007年度に独立した国内核探知局(Domestic
Nuclear Detection
Office)の放射能・核兵器対抗策R&D予算は前年度より500万ドル多い2億7,900万ドル。これは、DHSのR&D予算からProject
Bioshield調達予算を差し引いた実質R&D予算の約4分の1に相当。
■ X. 厚生省
厚生省の2009年度全体予算は、2008年度を290億ドル(4.1%)上回る7,369億ドル。2009年度予算の約56%がMedicare(老齢者医療保険);29%がMedicaid(低所得者医療保険);3.0%がSCHIP(児童の医療保険プログラム);2.4%がTANF(貧困家庭向け一時援助金プログラム)という義務的支出プログラムへの予算であって、国立衛生研究所(National
Institutes of Health = NIH)や食品医薬品局(Food and Drug
Administration)等への自由裁量予算は前年度より22億ドル少ない684.6億ドル(注:7)
となっている。
NIHの2009年度総予算は前年度予算と同額の294億6,500万ドル。NIH予算は、1998年から2003年までの5年間で倍増されたが、その後は伸び率が著しく減速し、2004年度にピークに達してからというもの、毎年ほぼ同額要求(注:8)
となっている。2009年度のNIH予算は、52.7%にあたる155億2,300万ドルがリサーチプロジェクト・グラント(Research
Project Grant =
RPG)に配分され、11.1%の32億7,500万ドルがR&Dコントラクトへ、10.6%の31億2,700万ドルが内部研究に、10.1%の29億6,300万ドルがリサーチセンターへの配分となる。

(出典:FY2009 HHS Budget-in-Brief
P.37の図を、NEDOワシント事務所が加工)
NIHのR&D予算は2008年度予算とほぼ同額の286億4,600万ドル。基礎研究が1,000万ドル削減され、施設・設備費が600万ドルの増額を受けはするものの、前年度とほぼ不変と言っても問題にならないようなごく僅かな変更に過ぎない。NIHの研究機関別では、国立癌研究所(NCI)、アレルギー・伝染病研究所(NIAID)、および、国立研究資源センター(NCRR)は各々、500万ドル、800万ドル、1,100万ドルの増額となる一方、他の研究機関の予算は全て100万ドル未満の微額または前年度同額に抑えられている。増減が100万ドル以上の研究所とセンターは下記の通り:

NIH予算のハイライト:
- 外部の研究者や研究機関を対象とするリサーチプロジェクト・グラント(RPG)の予算は前年度より1,900万ドル少ない155億2,300万ドルで、グラント交付数は全体で18件増えて38,257件となる見込みである。RPG予算は2004年にピークを迎えて以来、インフレ調整の実質ベースでは右肩下がりの傾向にある。このため、RPGグラント1件あたりの平均助成金も2004年度より9%縮小し、2009年度には4万8,100ドルとなる。また、グラント申請者のグラント獲得成功率はかつては3件に1件であったが、ここ数年は5件に1件となっており、2009年には成功率が18%まで落ちると推測されている。RPGの主な内訳は下記の通り:
- 競争グラント用予算は前年度より1,400万ドル少ない35億2,000万ドル。グラント交付数は9,757件(前年度より14件減少)。
- 無競争(Non-Competing)グラントの予算は11億6,900万ドルで、2008年度よりも2,400万ドルの削減となるものの、グラント交付数は31件増えて26,759件となる見込み。
- 中小企業革新研究(SBIR)と中小企業技術移転研究(STTR)のグラント予算は、2008年度と同額の6億2,000万ドル。グラント交付数は1件増加で1,741件となる。
- 次世代の生物医学研究者の訓練を目的とするリサーチ・トレーニング計画は、500万ドル(0.6%)増額で7億8,600万ドル。厳しい予算のため、フルタイムの研修ポジションは約17,600に保たれる。また、プレドクとポスドク研修生の棒給は僅かに引き上げられるものの、予想されるインフレ率には到底及ばない見通しである。
- 過去10年間で重要性を増した学際的研究センターを支援するリサーチセンターの2009年度予算は、前年度を2,000万ドル上回る29億6,300万ドルで、大学を中心とする1,417センターを支援する。
- バイオ医療研究ロードマップ(Roadmap for Biomedical
Research)(注:9)
の20098年度予算は前年度比7.7%(3,830万ドル)増の5億3,390万ドル。ロードマップの3テーマの内、「発見への新たな道(new
pathways to
discovery)」は2年連続の増額となるものの、「未来の研究チーム」と「臨床研究事業の活性化」の予算は各々、前年度比5.7%と10.9%の削減要求となっている。2009年度予算ではまた、ロードマップ新イニシアティブの予算として4,660万ドルを要求しているが、新たな重点分野は未だ確定していない。

- ブッシュ政権が、研究職に就いたばかりの新人研究者を支援する目的で2007年に創設した自立への道(Pathway
to
Independence)プログラムの2009年度予算は7,100万ドルで、3年目となる2009年には新規に170名の研究者にグラントを給付する予定。
- バイオ防衛研究(Biodefense
Research)の予算は3年連続の横ばい状態で、2009年度予算は前年度を僅か1.1%(2,000万ドル)上回る17億4,800万ドル。2009年度のバイオ防衛研究は、@化学的脅威の研究;A核・放射能脅威の研究を中心とする。特に、放射能被爆を測定・治療する新製品に関する基礎・応用研究は20%の増額となり、1億1,300万ドルまで引き上げられる。
- HIV/AIDSプログラムの2009年度予算は、前年度とほぼ同額の28億590万ドル。この内の3億ドル(前年度比500万ドル増)が、国際的な官民パートナーシップであるHIV/AIDS、マラリア、および、結核と闘う世界基金(Global
Fund to Fight HIV/AIDS, Malaria, and
Tuberculosis)へ計上(注:10)
される。
- 胎性幹細胞(embryonic stem cell)
研究は、ブッシュ大統領が2001年8月にヒト胎性幹細胞研究に対する連邦政府支援を制限すると発表して以来、論議の的になっている。連邦政府が支援する胎性幹細胞研究の大幅拡大を狙った法案に、ブッシュ大統領は既に二度にわたって拒否権を発動しているものの、NIHの幹細胞研究予算は伸びており、2009年度には6億5,600万ドルに達すると推定されている。
■ IX. 省庁間プログラム
1. ネットワーキング・情報技術R&D(Networking
and Information Technology R&D = NITRD)
ネットワーキング・情報技術R&D(NITRD)では引き続き、@高性能コンピューティング(High-end
computing)の基盤整備とR&D;A先端ネットワーク研究(Advanced
networking
research);Bサイバーセキュリティと情報保証(information
assurance)を三大優先事項としており、ブッシュ大統領は2009年度予算として、2008年度予算を2億700万ドル(6.2%)上回る35億4,800万ドルを要求している。省庁別では、昨年同様にACIの一環として、全米科学財団(+1億5,900万ドル)とエネルギー省(+5,800万ドル)が更なる増額を受けるほか、商務省も前年度比5.9%(500万ドル)の増額となっている。環境保護庁(EPA)と米国国立公文書館の予算は前年度と同額ながら、国防省のNITRD予算は1,300万ドル削減、および、厚生省NIHと米宇宙航空局の予算も各々100万ドル減額されている。NITRDのプログラム構成分野(program
component area =
PCA)別では、「人間とコンピュータの相互作用および情報管理(-730万ドル)」を除く、7つのPCA予算は全て増額(注:11)
されている。NITRDに参加する連邦各省庁の拠出額は下記の通り:

2. 国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(National
Nanotechnology Initiative = NNI)
2009年度のNNI予算要求額は、前年度を3,600万ドル(2.4%)上回る15億2,700万ドルで、ブッシュ政権1年目の2001年度予算(4億6,400万ドル)の3倍以上となってはいるものの、「21世紀ナノテクノロジー研究開発法(21st
Century Nanotechnology Research and Development
Act)」で認可された2005年度から2008年度までの5省庁
…全米科学財団(NSF)、エネルギー省、商務省NIST、米航空宇宙局(NASA)、および、環境保護庁…
予算と比較すると、この要求額は2006年度認可額(8億8,900万ドル)にすら及ばない金額に留まっている。ACIの一環として物理科学・工学研究予算を大幅に増額するこという大統領のコミットメントを反映し、DOEと商務省NISTおよびNSFのナノテクR&D予算が各々、6,100万ドル、2,100万ドル、および、800万ドルの増額を受ける一方で、国防省のナノテク予算は削減となる。PCA別では、@「ナノスケールで生じる現象とプロセスの根本的理解」の予算が前年度より1,920万ドル増えて5億5,080万ドル;A「ナノテクのための研究機器、計測基準と標準規格」が2,110万ドル増の8,150万ドル;B「ナノマニュファクチャリング」は1,190万ドル増額で6,210万ドル;C「主要研究施設の建設と大型研究機器の調達」が690万ドル増の1億6,130万ドル;D「環境・衛生・安全面」は1,780万ドル増額で7,640万ドル;E「教育と社会的側面」が170万ドル増の4,070万ドルとなる反面、「ナノ材料(-2,750万ドル)と「ナノスケールのデバイスとシステム(-1,530万ドル)」は減額要求になっている。NNIに参加する連邦政府機関は現在17省庁(注:12)
で、この内の13省庁がNNIに予算を拠出している。この13省庁による拠出額は下記の通り:

3. 気候変動科学プログラム(Climate Change Science
Program = CCSP)
ブッシュ政権の要求する2009年度気候変動科学プログラム(CCSP)予算は、前年度比9.6%(1億7,700万ドル)増の20億1,500万ドルであるが、実質ベースでは、1995年度(クリントン政権下)のピーク予算よりも約17.7%の減少(注:15)
となり、ブッシュ政権発足年である2001年度予算と比較しても約2.5%の減少となる。また、ブッシュ政権は2007年度に、これまでCCSPの一環と見なされていなかったNASAの活動をCCSP予算として分類し直したことから、既存研究活動の増減の実態を見極めることが非常に難しくなっている。CCSPの2009年度予算要求額を2008年度予算と比較すると、省庁別ではNASA(+1億2,600万ドル)(注:16)
、NSF(1,600万ドル)、商務省NOAA(+2,000万ドル)、および、エネルギー省(+1,800万ドル)がかなりの増額を受ける一方で、内務省USGSと農務省のCCSP予算は各々、300万ドルづつ減額されている。CCSP参加各省庁の予算は下記の通り:

注釈:
1:飛行に伴う問題を科学的に研究し、現実的な解決策を見つける目的で1915年3月に設置された全米宇宙飛行諮問委員会は(National
Advisory Committee for
Aeronautics)は、1958年にNASAに生まれ変わった。
2:2008年度大統領予算要求額(173億900万ドル)との比較では、1.8%(3億520万ドル)の増額に留まる。
3:2009年度の応用研究予算要求額をブッシュ大統領の2008年度要求額と比較した場合、減額率は5.5%となる。
4:2008年度大統領要求額との比較では、1,200万ドル(7.3%)の増額。
5:MDAは開発志向の機関であって、研究支援はもう行っていない。
6:2008年3月6日に更新されたHomeland
Security Centers of
ExcellenceのHPによると、HS優良センターは現在、全米に13箇所。
7:NIHの自由裁量予算は、厚生省全体予算の僅か9%にすぎない。
8:インフレ調整した実質ベースで見ると、NIH予算は5年連続で減少傾向になる。
9:正式名は、NIH Common Fund。
10:同基金に対する米国の負担金は5億ドル。
11:NITRDのPCA別予算要求は、「大統領の2009年度予算に対するNITRD補足資料(NITRD
Supplement to the President's FY 2009 Budget
)」の21ページに記載されている。
12:表に記載された13省庁の他に、米国特許商標局、消費者製品安全委員会、労働省、および、教育省が参加している。
13:国立労働衛生研究所の略称。。
14:FSは林野部、CSREESは共同研究教育普及局の略称。
15:USGCRP-CCSP
Budget History
Table、および、2009年度要求額がインフレ調整後の実質ベースでは2008年度予算比で約7%の増額になるというClimateScienceWatchの推定に基づいて算出。
16:ブッシュ政権では過去数年間、NASA地球観測衛星予算の削減を要求していたが、2009年度予算ではこの傾向を逆転させて、増額を要求している。
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