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上院本会議、エネルギー法案を可決
NEDOワシントン事務所
松山貴代子
2007年6月24日
米国上院は本会議におけるエネルギー法案審議の行き詰まりの一因となっていた企業平均燃費(Corporate
Average Fuel Efficiency =
CAFE)基準の引上げに関する超党派の妥協案が6月21日夕刻にまとまったことを契機とし、同日の21日夜に65対27でエネルギー法案を可決した。ここでは、Harry
Reid上院民主党院内総務(ネバダ州)が2007年5月17日に発表した「2007年再生可能燃料、消費者保護、及びエネルギー効率改善法案(Renewable
Fuels, Consumer Protection, and Energy Efficiency Act of
2007:上院第1419号議案)」(注:1)
の概要と、上院本会議に提出された327本の修正法案の内、審議・採決された主要な修正法案について報告する。
A.
2007年再生可能燃料、消費者保護、及びエネルギー効率改善法案(上院第1419号議案)の概要
第1章
エネルギー安全保障および輸送の為のバイオ燃料
1. 再生可能燃料使用基準(Renewable Fuel Standard =
RFS)
- 2008年から2022年までのRFS、および、2016年から2022年までの先進バイオ燃料(セルロース系エタノールやバイオブタノール、非従来型のバイオマス原料から精製したその他燃料)の消費量を下記の通り定める。
- 大統領はエネルギー長官、農務長官、および環境保護庁(EPA)長官と協力し、2007年から2022年までの同プログラムの実施状況評価に基づいて、2023年以降のRFSを決定する。
- 大統領はEPA長官と協力し、再生可能燃料使用基準を管理するクレジット取引プログラムを導入する。
2. 再生可能燃料インフラストラクチャー
- 再生可能燃料基盤整備パイロット計画 …
11%〜85%の再生可能燃料を混合したガソリン、または、最低10%の再生可能燃料を混合したディーゼル燃料を販売する燃料補給回廊(corridor)を米国各地に最高10ヶ所構築する、パイロット計画を設置する。競争グラントの対象となるのは、州政府、地方政府、原住民部族政府、都市交通局、または、これらのパートナーシップで、助成額は最高2,000万ドル、助成基金は最高2年間とする。同計画の総予算は2億ドル。
- バイオエネルギー研究開発 …
先進バイオ燃料開発支援で、DOEバイオエネルギー研究開発の2008年度予算を3億7,700万ドルに、2009年度予算を3億9,800万ドルに引き上げる。
- システム生物学の為のバイオ研究センター計画 …
バイオ燃料に重点をおくバイオ研究センターを最低11ヶ所設置する。
- 再生可能燃料生産施設に対する政府借入保証 …
対象となるのは、エタノールや他の先進バイオ燃料を年間5万ガロン以上生産する施設で、保証総額は最高2億5,000万ドル。
- 特定州を対象とする再生可能燃料生産研究開発グラント …
DOE長官がエタノール(セルロース系エタノールも含む)生産率が低いと判断した州に所在する適格機関にグラントを給付し、再生可能燃料生産技術の研究・開発・導入を行う。2008年度から2010年度まで、同グラント予算として年間2,500万ドルを認可する。
3. 研究報告
- DOE長官は全米科学アカデミー(National Academy of
Sciences)に委託して、先進バイオ燃料の生産・輸送・流通に関連する技術の調査を実施する。
- DOE長官は農務長官・EPA長官・運輸長官と協力し、エタノール混合率10%〜40%のガソリン消費を米国で拡大する可能性についての研究を実施する。
- DOE長官は農務長官や運輸長官と協力し、エタノール専用のパイプライン建設の実行可能性について調査を行う。
- DOE長官は、再生可能エネルギーで発電された電力で走る電気自動車にクレジットを支給する可能性について調査を実施し、同法施行後18ヶ月以内にその報告書を上院エネルギー・天然資源委員会と課員エネルギー商業委員会に提出する。
- DOE長官は、バイオ燃料使用に伴なうエンジンの耐久性に関する調査を実施する。
- DOE長官は運輸長官やEPA長官と協力し、オフロード車両にエタノール混合ガソリンを使用する際の作動面・安全面・耐久面・環境面での影響を評価する調査を実施する。
第2章 エネルギー効率改善推進
1. 先進照明技術の推進
- 連邦政府ビルの全ての一般照明全を2010年10月1日までに、Energy
Star認定、または、連邦エネルギー管理プログラム(Federal
Energy Management
Program)が高効率と指定した照明機器に換える。
- 2008年1月1日発効予定の効率基準で対象とする、白熱反射灯(incandescent
reflector lamp)の種類を拡大する。
2. 電化製品向けエネルギー効率新基準の促進
- エネルギー省(DOE)の策定する家庭用ボイラー、皿洗い機、洗濯機、冷蔵庫、冷凍庫、除湿機、電動機の効率基準を迅速に法制化する。
- DOEが、暖房と冷房装置向けに最高3種類の地域別基準(regional
standard)を設定することを認可する。但し、地域別基準の設定を義務付けるものではない。
- 連邦取引委員会(FTC)はパーソナルコンピュータやモニター、テレビやデジタル・ビデオ・レコーダーをEnergy
Guideラベリング計画へ追加することについて、DOEと環境保護庁(EPA)のEnergy
Starプログラム担当者と協議する。
- DOE長官が、高効率製品の製造業者に奨励金を授与することを認可する。
3. 自動車のエネルギー効率化目標を設置
- ガソリンの消費削減目標を下記の通りとする。
- 2017年までに、エネルギー情報局(EIA)推定レベルより20%削減
- 2025年までに、EIA推定レベルより35%削減
- 2030年までに、EIA推定レベルより45%削減
- 米国全体のエネルギー生産性(エネルギー入力量あたりのGDPで、現在は1.8%)を2012年までに最低2.6%まで引き上げる。
4.
高効率の自動車、先進バッテリー、エネルギー貯蔵の推進
- 自動車用の先進炭素複合材や軽量合金鋼といった軽量材料の研究・開発プログラムに、DOE長官が2007年度から2012年度まで毎年6,000万ドルを計上することを認可する。
- 「2005年包括エネルギー法」を修正して、DOE長官が、燃費の良い自動車の部品を製造する施設に借入保証を発行することを認可する。
- 先進技術自動車生産インセンティブ計画の設置を認可する。
- プラグイン型ハイブリッド自動車等の電気駆動技術の研究開発プログラムを認可する。
- (i)バッテリーの基礎研究に今後10年間で5億ドル;(ii)基礎研究から、類のない斬新バッテリーへの遷移(transition)研究に8億ドル;(iii)バッテリーの先進製造技術開発で産業界と協力する研究センター4箇所の設立に今後10年間で10億ドルを認可する。
5.
エネルギー効率化・再生可能における連邦政府リーダーシップの推進
- DOE長官は、2016年度までに連邦・州政府所有車両の石油消費を2005年ベースラインの30%減まで引き下げるための規制を発行する。
- 「2005年包括エネルギー政策法」の定めた連邦政府の再生可能利用電力調達義務を変更し、2010年までに10%、2015年までに15%とする。
- 連邦政府所有の新設および新装ビルにおける化石燃料消費量を50%削減することを義務付ける。こうしたビルの化石燃料消費を5年毎に10%づつ削減し、2030年までに「カーボンニュートラル」とする。
6. エネルギー効率改善で州政府と地方政府を支援
- 耐候化支援プログラムを2009年度から2012年度まで再認可し、認可額を現行レベルより5,000万ドル増額して7億5,000万ドルまで引き上げる。
- エネルギー効率改善計画を実施する地方政府を対象とするブロックグラントを認可する。
- 大学のエネルギー効率化プロジェクトや革新エネルギー技術プロジェクトを対象とするグラント計画を認可する。
第3章 炭素回収貯留技術の研究・開発・実証
1. 炭素回収貯留技術の研究・開発・実証プログラム
- DOE長官は、@二酸化炭素(CO2)を回収・貯留・再利用する新アプローチ開発のために実験室規模の実験や数値モデリング及びシミュレーションといった基礎エネルギー研究;Aガス化施設から放出されるCO2の大規模回収実証プロジェクト;B7つ以上の大規模炭素地質隔離テストを実施する。また、地域的炭素隔離パートナーシップ(regional
carbon sequestration
partnership)の地質隔離テスト実施を推進する。
- 同プログラム予算として、2008年度に1億5,000万ドル、2009年度に2億ドル、2010年度に2億ドル、2011年度に1億8,000万ドル、2012年度に1億6,500万ドルを認可する。
2. CO2貯留キャパシティの査定評価
- 内務長官は、CO2キャパシティ査定評価を実施する為の方法論を策定する。新データを取り入れるため、少なくても5年に一度は方法論を更新する。
- 内務長官は、査定評価を首尾よく行うために、DOE長官や環境保護庁(EPA)長官、および、州政府の地質調査機関と協力する。
- 内務長官は方法論公布後2年以内に、DOE長官および州政府地質調査機関との協議によって国家CO2貯留キャパシティ評価を完成させる。
- この査定評価を行う2008年度から2012年度までの予算として3,000万ドルを認可する。
3. 炭素回収・貯留イニシアティブ
- DOE長官は、化石燃料利用の発電所や石油精製所、鉄鋼所や輸送用石炭由来燃料製造施設といった産業発生源からのCO2を大規模に回収する技術を実証するプログラムを実施する。
- コスト分担型の同イニシアティブ予算として、2009年度から2013年度まで年間1億ドルを認可する。
第4章
コスト効率的かつ環境持続可能な公共ビルディング
1. 公共ビルディングのコスト節減
- 一般調達局(General Services Administration =
GSA)長官は、GSA所有施設においてコスト効率的な技術・慣行の利用を促進するプログラムを設置する。
- 同プログラムの一環として、GSA長官は、@GSA施設でのコスト効率的照明技術利用状況、および、現場マネージャーがこうした技術を利用できる度合いを調査し;A既存照明技術をよりコスト効率的な技術に取り替える推進プログラムを設置する。
- EPA長官は、コスト効率的技術・慣行導入による州政府のビル運営コスト節減を支援するため、州政府対象の競争グラント計画を設立する。
2.DOE本部における太陽光発電システム設置
- DOE本部ビル(俗称Forrestal
Building)に太陽光発電システムを設置する。
3. 高性能グリーンビルディング
- GSA長官は、@高性能グリーンビルディング担当部の新設;Aグリーンビルディング諮問委員会の創設;B高性能グリーンビルディング研究計画の策定と提言;C高性能グリーンビルディングの達成に影響を及ぼす現行予算や契約慣行の分析、等を行うディレクター職を新設し、ディレクターを指名する。
- 「高性能グリーンビルディング」とは、@エネルギー・水・材料資源の利用量およびゴミ発生量を減らすビル;A環境調和型製品が多く利用されているビル;Bリサイクルや再利用を助長するビル;Cシステム統合されたビル、等を指す。
- 上記ディレクターは、2006年に開催された連邦政府持続可能なビルディングに関するホワイトハウスサミットで発表された環境管理スコアカード(Environmental
Stewardship
Scorecard)の実施支援について諮問委員会と協議し、その研究目標達成に向け、連邦ビルディングにおける具体的実証プロジェクトの実施ガイドラインを策定する。
第5章 企業平均燃費(CAFE)基準
1. 自動車及びその他特定社のCAFE基準
- 乗用車および軽トラックのCAFE基準を2020年までに35マイルまで引き上げ、その後2030年までは毎年4%の燃費引き上げを義務づける。
- 運輸長官は、2013年型以降の業務用中型・大型トラックに対して達成可能な最大限のCAFE基準を定める。
2. 燃費基準の修正
- 運輸省は車両のサイズに基づいたCAFE基準を設定する。但し、運輸省が目標達成を技術的に不可能と判断した場合には、燃費引き上げ率を縮小することを認める。
3. CAFEクレジット取引プログラム
- 運輸長官は、CAFE基準に勝る成果をあげたメーカーがクレジットを取得し、そのクレジットを基準未達成のメーカーに売却することを認めるCAFEクレジット取引プログラムを設置する。
4. フレキシブル燃料自動車の可用性
- フレキシブル燃料自動車を生産する自動車メーカーに、2012年型新車の最低50%、2013年型車の60%、2014年型車の70%、2015年型車の80%をフレキシブル燃料自動車とするよう義務付ける。
第6章 便乗値上げ
- 大統領がエネルギー危機地域に指定する地域で、供給業者が原油やガソリンや石油蒸留物を法外な価格で販売することを違法とする。
- 国家緊急時に、ガソリン便乗値上げを調査し取り締まる権限を連邦取引委員会(Federal
Trade Commission)に付与する
第7章 エネルギー外交および安全保証
B. 上院本会議に提出された主要な修正法案
1.
米国の一日あたりの石油消費を2016年までに250万バレル、2026年までに700万バレル、2031年までに1,000万バレル減らすことを義務付ける修正法案(上院修正法案第1509号議案)…Joe
Lieberman上院議員(無所属、コネチカット州)提案。6月12日に、63対30で可決された。
2. 再生可能エネルギー使用基準(Renewable Portfolio
Standard = RPS)の設定
- 2020年までに連邦政府の使用する総電力の20%を再生可能エネルギーまたはクリーンエネルギーで賄うことを義務付けるという、クリーンエネルギー使用基準(Clean Portfolio
Standard)を設定する修正法案(上院修正法案第1538号議案) …
Mitch
McConnell上院議員(共和党、ケンタッキー州)提案。6月14日に39対56で否決された。
- 2020年までに総電力の15%を再生可能エネルギーで賄うことを電力会社に義務付ける修正法案(上院修正法案第1537号議案)
…Jeff
Bingaman上院議員(民主党、ニューメキシコ州)提案。上記の上院修正法案第1538号議案が否決された後、Bingaman上院議員とDomenici上院議員(共和党、ニューメキシコ州)の合意によって、同修正法案は撤回(注:2)
された。
3.
プラグイン・ハイブリッド車の開発推進や、電気自動車調達プログラム等の導入によって、輸入石油依存度の軽減を図る修正法案(上院修正法案第1572号議案)
…Ken
Salazar上院議員(民主党、コロラド州)提案。6月14日に、発声投票で可決された。
4. 石炭液化燃料(CTL)の使用義務付け設定
- 石炭液化燃料(CTL)をガソリンよりもGHG排出が20%少なく、二酸化炭素排出を100%回収する施設で生産された燃料と定義し、2022年までに年間60億ガロンのCTL使用を義務付ける修正法案(上院修正法案第1628号議案)
… Jim Bunning上院議員(共和党、ケンタッキー州)とPete
Domenici上院議員(共和党、ニューメキシコ州)提案。6月19日に、39対55で否決された。
- 石炭燃料施設に直接借款やコスト分担等のイニシアティブを提供する修正法案(上院修正法案第1614号議案)
…Jon
Tester上院議員(民主党、モンタナ州)とBingaman上院議員(民主党、ニューメキシコ州)提案。6月19日に、33対61で否決された。
- 5.
乗用車および軽トラックの企業平均燃費(CAFE)基準を2020年までに35マイルまで引き上げ、2021年から2030年までは運輸長官に達成可能な最大限基準の設置を義務付け、2015年に米国で製造・販売される新車の50%を代替燃料自動車とする計画を策定するよう運輸長官に命じる修正法案(上院修正法案第1792号議案)
… Ted
Stevens上院議員(共和党、アラスカ州)提案。6月21日に発声投票で可決された。
6.
温室効果ガス(GHG)の国家目録を創設する修正法案(上院修正法案第1557号議案)
…
Bingaman上院議員(民主党、ニューメキシコ州)提案。6月21日に、議事進行上の異議申し立て(point-of-order)によって否決された。
7.
輸入エタノールに対する1ガロンあたり54セントの関税を撤廃する修正法案(上院修正法案1718号議案)
…Judd
Gregg上院議員(共和党、ニューハンプシャー州)提案。6月20日に、36対56で否決された。
8.
石油・ガス業界の税金を増額し、321億ドルの再生可能エネルギー生産インセンティブを提供する修正法案(上院修正法案第1704号議案)
… Max
Baucus上院議員(民主党、モンタナ州)提案。6月21日の同法案討議終結(cloture)動議は57対36で、必要票の60票を獲得することが出来ず、同修正法案は可決に至らなかった。
9.
石油生産・輸出国が石油生産量や原油価格操作を違法とし、米国司法省がOPECに対して独禁法違反の訴訟を起こすことを認める修正法案(上院修正法案大1519号議案)
… Herb
Kohl上院議員(民主党、ウィスコンシン州)提案。6月19日に70対23で可決された。
注釈:
1:米国下院が2007年1月18日に「2007年CLEANエネルギー法案(CLEAN
Energy Act of
2007:下院第6号議案)」を可決済みであるため、6月11日の上院本会議でHarry
Reid上院院内総務は上院第1419号議案を下院第6号議案に対する代替案として提出、これが全会一致で承認されて、上院のエネルギー法案として審議された。従って、上院本会議で審議されたエネルギー法案は正式には上院修正法案第1502号議案となるのであるが、この報告書では便宜上、上院第1419号議案と呼ぶ。。
2:Greenwireは、上院修正法案第1537号議案を取り下げたBingaman上院議員が、Mary
Landrieu上院議員(民主党、ルイジアナ州)と共に、RPSをスケールダウンした修正法案
…2022年までに15%のRPSを電力会社に義務付け、その内の約4分の1をエネルギー効率化施策で満たすことを認可…
を準備中のようだと報道していたが、最終的には実現しなかった。
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