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(概要 −その1−) NEDOワシントン事務所 2003年12月に成立した「21世紀ナノテクノロジー研究開発法(21st Century Nanotechnology Research and Development Act:以下「ナノテク法」という)」(注:1)には、全米ナノテクノロジー調整局(National Nanotechnology Coordination Office = NNCO)の局長に対して、全米科学アカデミー(National Academies of Science = NAS)の全米研究委員会(National Research Council = NRC)と締結し、3年毎に国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(National Nanotechnology Initiative = NNI)の査定評価を実施するよう義務付ける条項が盛り込まれている。2006年9月25日にNRCが発表した 『大きさの問題:国家ナノテクノロジー・イニシアティブの3年毎レビュー(A Matter of Size: Triennial Review of the National Nanotechnology Initiative:以下「レビュー」という)』は、ナノテク法のこの規定に基づいて策定された第一回目の報告書で、NNIの予算レベルや省庁間調整といった3年毎レビューの対象事項を査定しているほかに、今回一回限りの調査として、@レスポンシブルなナノテクノロジー開発を保証する基準・ガイドライン・戦略の必要性を査定し;A分子自己組織形成(molecular self-assembly)の技術的可能性も検討している。 NRCは「レビュー」の作成にあたり、オハイオ州立大学の物質科学教授でNASの全米工学アカデミー(National Academy of Engineering = NAE)理事長であるJames C. Williams博士を始めとする23名(注:2)構成のNNIレビュー委員会(Committee to Review the National Nanotechnology Initiative)を設置した。委員会メンバーの専門は、ナノスケール科学工学から産業研究開発に至り、分野横断的(interdisciplinary)研究からビジネスマネジメント、バイオ医療や保健、環境保護や国家安全保障、国際的ベンチマーク、商用化に向けた技術移転、知的財産問題やナノテクノロジーの社会的・倫理的影響まで網羅している。 NNIレビュー委員会では、NNIに関連する省庁間協力と広範な研究開発(R&D)プログラムに関して情報を収集し、洞察力を得るため、4回のワークショップ(注:3)を開催したほか、一連の非公開会合や電話会合を行って調査結果を討議し、委員会の結論および提言を策定したという。NNIレビュー委員会の結論と提言を下記の五部構成でまとめられている。 第一章 国家ナノテクノロジー・イニシアティブの見直し
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NNIの現状と業績の正確な描写、および、将来改善の余地がある機会の確認 ここでは、第一章の国家ナノテクノロジー・イニシアティブの見直しについて概説する。
国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)は比較的若い活動であり、NNIのこの早期段階において、NNI投資によって達成された技術上の実績や目標を査定評価することは時期早尚である。このため、NNIレビュー委員会では、今回の「レビュー」にNNIの包括的な技術アセスメントを盛り込んでいない。また、NNI参加各機関の予算レベルがプログラム目標遵守に十分か否かの査定評価は、委員会の資源を遙かに超えた各省庁のプログラム別分析を必要とするため、今回の「レビュー」ではこのアセスメントも試みていない。一方で、NNIレビュー委員会は、NNI活動に関するデータ収集が十分とは言えないながらも、多分野にまたがる貴重な成果の事例があがっており、NNIの下で構築されたR&Dインフラストラクチャーが技術上の実績をあげる上で有用であることを確信しているという。NNIレビュー委員会の評価結果と提言は下記の通り。 1. 連邦政府の研究開発支援 NNIに参加している連邦政府の内、11機関(注:4) …農務省(USDA)、国防省(DOD)、エネルギー省(DOE)、国土安全保障省(DHS)、司法省(DOJ)、環境保護庁(EPA)、米航空宇宙局(NASA)、厚生省(HHS)の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、商務省(DOC)の国立標準規格技術研究所(NIST)、HHSの国立衛生研究所(NIH)、全米科学財団(NSF)…が現在、ナノテクノロジーへの投資を報告している。米国によるこれまでのナノテクノロジー投資が、今後10年間に米国の科学者やエンジニアによって達成されるであろうナノスケールの貴重な進歩の発端になることは明白であり、NNIで確立したR&Dプログラムは、各省庁の単独投資によるよりも遙かに大きな影響力を持っていることも明らかである。また、NNIの学際的共同アプローチが、根本的なナレッジ(knowledge)の創造に必要な基礎研究を前進させ、分野横断的プログラムの継続的成長に必要な新インフラストラクチャーの確立を可能にしたほか、連邦政府機関による優先事項の確立、プログラムの調整、資源への梃入れも、NNI活動への参加が契機になったといえる。 緊縮予算の折にはR&Dプログラム予算にも優先順位が付けられるが、短期の応用研究を優遇するあまり、長期のナノスケール基礎研究支援を犠牲にしてはならない。基礎研究と応用研究は同等に重要であり、NNIでこれらのバランスを確立するためには、省庁間調整メカニズムの継続的運営、および、ナノスケール科学技術の専門知識を持つR&D界の助言へのアクセスが必要である。 《提言》
ナノテク法では、ナノテクノロジーの研究開発・実証や教育、技術移転や商用化、および、社会・倫理面の問題について助言や情報提供を行うナノ科学・ナノ技術の専門家から成る諮問委員会(注:5)を設置または指定するよう大統領に義務付けている。ブッシュ大統領が2004年7月に大統領の科学技術政策諮問委員会(President's Committee of Advisors on Science and Technology Policy = PCAST)を国家ナノテクノロジー諮問委員会(National Nanotechnology Advisory Panel = NNAP)に指定(注:6)したことは、NNIの重要性を示す証しとして喜ばしいことではあるものの、米国はやはり、ナノテクノロジーやナノ科学の専門知識を有する科学技術アドバイザーの独立委員会を必要としている。こうした諮問委員会はナノスケール科学工学に焦点をあてた研究機会や投資戦略、レスポンシブルな開発アプローチやプログラム優先順位付けでPCASTやナノスケール科学工学技術小委員会(Subcommittee on Nanoscale Science Engineering and Technology = NSET小委員会)、および、NNCOに提言することが可能である。 PCASTはNNAPとしての役割を遂行するため、ナノテクノロジーに関する専門情報の提供源として、連邦政府や民間部門のナノテクノロジー有識者約50名から成るナノテクノロジー技術諮問グループ(technical advisory group = TAG)を設置したが、TAGは効果的メカニズムであるとはいえない。NNIには、[TAGよりも]体系的でナノテクノロジーに専心する小規模かつ効果的な諮問委員会が必要である。
3. 作業部会、その他の調整・連絡・アウトリーチメカニズムの設置 NSET小委員会は、NNIの目標(注:7)やプログラム構成分野(Program Component Area = PCA)(注:8)に照らして、具体的な省庁間問題に対応するため、@ナノテクノロジー環境・衛生影響(Nanotechnology Environmental & Health Implications = NEHI);A業界連絡(Industry Liaison);Bナノマニュファクチャリング;Cナノテクノロジー社会参画(Nanotechnology Public Interaction)という4つの省庁間作業部会を設置した。 NSET小委員会ではまた、経済成長や雇用創出等の公益を生み出すために新技術の製品化を推進するというNNI第二目標の達成を目指し、ナノテクノロジー推進諮問委員会(Consultative Board for Advancing Nanotechnology = CBAN)も設置している。 アウトリーチを更に広めるための別個の努力が、国務省が中心となって形成したナノテクノロジーの国際問題(Global Issues in Nanotechnology)に関する作業部会である。これは、ナノテクノロジーに関する米国国際活動へのアドバイス提供や活動調整、および、国際プログラムのモニター等を行う作業部会で、国際問題に関心を持つ米通商代表部(USTR)や商務省の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security)等が参加している。 上記の努力がこれまでにもたらした肯定的な影響からして、NNIに刺激されて設置された作業部会やその他のアウトリーチおよび調整努力が、ナノテクノロジーの秘める可能性をフルに実現することを目指すR&D努力の調整に大きく貢献していることは明らかである。
NNIのもたらした非常に重大な影響の一つが、NNI参加省庁による、ナノ科学・ナノテクノロジーに専心する学際的研究・教育センターの創設や整備への集中的投資である。こうして設立したセンターの大半は、大学や民間部門のユーザーや国立研究所の科学者等に、物理的な施設や装置や計測機器、および、技術的専門知識や必要な運用要員(オペレーター)を提供するユーザー施設であって、NNI参加省庁の科学的・技術的資源へのアクセスを広げる有力かつ有効な媒体となっている。主要なセンターの例は下記の通り:
2005年5月26〜27日にドイツで開催された第3回世界ナノテクノロジー・ネットワーク構築国際ワークショップ(3rd International Workshop to Develop a Global Nanotechnology Network)でアジア・ナノフォーラム(Asia Nano Forum)が発表したアンケート調査の結果は、ナノテクノロジーの進展に必要不可欠な研究機器や装置や施設の基盤構築という点では、米国が世界トップクラスにあることを指摘している。NNI参加省庁が、ナノスケールでのイノベーションを支援する国家R&Dインフラストラクチャー構築に向けてかなり進展したことは明らかであり、NNIレビュー委員会は、学際的ナノスケールR&Dセンターおよびネットワーク構築におけるNNIのこれまでの進歩を申し分なしと評価している。
米国の科学技術進歩力を今後も維持していくためには、NNI R&Dの財政支援だけでなく、人材面での堅固なインフラストラクチャーの確保も必要となる。NNIは現在、国内の大学院生に世界トップクラスの教育や研究トレーニングの機会を提供し、21世紀の有能労働者育成に貢献しているが、ナノテクノロジーR&Dに携わる企業が必要とする、分野横断的な技能と専門知識を有する労働者を供給するためには、科学技術の教育や訓練の新たなアプローチが必要である。既存の4つのNNI省庁間作業部会が多大な成果を上げている一方、教育資源や熟練労働者育成の問題に対応するNNI省庁間の調整は十分とはいえず、NNIレビュー委員会の行ったワークショップでも、教育・労働力開発の助長努力を勘案してナノスケールR&Dを調整する必要性が取り沙汰された。NNI新参者の教育省(DOEd)と労働省(DOL)は、ナノスケールR&DにゆかりのあるK-12教育や国家労働力の主要問題をまとめ・優先づけることを支援することが出来るため、これらを中心とした教育作業グループをNSET小委員会の中に新設することを検討すべきである。 米国留学中または米国定住の外国生まれの研究員や学生が全ての理工系分野に重要な貢献をしているということが広く認識されている。ナノテクノロジーに関心を持つ世界最高水準の学生や研究者が引き続き米国を選ぶか否かは、移民法や輸出管理法といった法的枠組みにかかっている。NNI参加省庁やその他の適切な連邦行政機関および米国議会に対して、米国R&D事業の開放性(openness)の維持、および、国籍に拘らない、質の高い科学技術労働力の構築の重要性を明確に示すことも、NNIの重要な役割であろう。
注釈: 1:同法令の概要は、NEDOワシントン事務所調査レポート「国家ナノテクノロジー研究開発法」(その1)で紹介。
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