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NEDOワシントン事務所
ブッシュ政権が2005年2月7日に、総額2兆7,500億ドルという2006年度大統領予算教書を発表した。2005年度予算提案では、@対テロ戦争での勝利;A国土安全保障の強化;B経済成長と雇用創出の推進を国家三大優先事項としていたが、2006年度予算提案では、財政赤字(注:1)を2009年までに半減するという誓約の達成を考慮し、経済成長と雇用創出の推進に代わって、支出制約にコミットしている。防衛関連予算と国土安全保障関連予算を含めた裁量的支出(discretionary spending)の伸び率は、ブッシュ大統領が今年2月2日の年頭教書演説で示唆した通り、推定インフレ率を下回る2.1%に抑えられ、その総額は8,403億ドルとなっている。但し、防衛関連予算として前年度比の4.8%、国土安全保障関連予算として3.0%の増額を要求しているため、防衛・国土安全保障関連以外のプログラムは2006年度に約1%の削減に直面することになる。 ブッシュ政権は防衛・国土安全保障関連以外のプログラムを、3つのクライテリア …@プログラムは国家優先事項に適っているか;Aプログラムは税金の適切な利用という大統領の根本方針に適っているか;Bプログラムは意図された成果をあげているか… によって評価し、これを満たさない約150のプログラムの廃止または大幅縮減を提案している。商務省の先端技術計画(Advanced Technology Program)、運輸省の次世代高速鉄道、米航空宇宙局のハッブル宇宙望遠鏡補修等が廃止対象にあげられているほか、省庁間R&Dプログラム(注:2)、および、Even Start識字教育事業や州政府への職業訓練グラントといった教育プログラム(注:3)が削減の対象となっている。ブッシュ政権ではこれによって、2006年度に約200億ドルを節減できると指摘している。しかしながら、廃止対象プログラムの殆どは、議会に強力な支持者を持ち、過去の廃止論争にも生き残ったプログラムであるため、行政府の廃止提案は非現実的(注:4)であるという批判も出ている。 大統領の提案する2006年度研究開発(R&D)予算は、2005年度予算1,315億7,100万ドルを約7億3,300万ドル(0.6%)上回る1,323億400万ドル(注:5)であるが、インフレ率を遥かに下回る伸び率であるため、実質的には、連邦R&D予算は1996年以来始めて減少(注:6)することになる。基礎研究費は前年度比1.2%減で266億800万ドル、応用研究が前年度とほぼ同額の282億3,200万ドル、R&D施設・装置は47億9,800万ドル(前年度比3.7%減)に削減となる一方で、開発予算は1.7%増額され726億6,600万ドルに引き上げられている。省庁別では、国土安全保障省(DHS)のR&D予算が23.8%、米航空宇宙局(NASA)が4.9%、運輸省が8.0%、そして、全米科学財団(NSF)が2.7%の増額となるほか、国防省と厚生省(HHS)の国立衛生研究所(NIH)のR&D予算が各々0.6%と0.5%という微増をうける。一方で、エネルギー省(DOE)、商務省の国立海洋大気局および国立標準規格技術研究所、環境保護庁(EPA)他のR&D予算は軒並み削減となっている。 R&D予算の内でも、新知識や新技術の発見を目的とする研究に充てられる「連邦科学技術(FS&T)」予算に対するブッシュ政権の要求額は、前年度を8億7,700万ドル下回る608億1,900万ドルであり、NIH(前年度比1%増)、NASA(4%増)、NSF(2%増)、および、EPA(2%増)以外は、全て減額となっている。ブッシュ政権よりも米国議会の方がFS&T予算の重要性を認識しているようであり、昨年、大統領の2005年度FS&T予算削減案を覆して逆に増額(注:7)を行ったことから判断して、2006年度予算で議会が要求通りの削減に応じる可能性はかなり低いものと思われる。 2006年度大統領予算教書では、増額または新設される37のイニシアティブを特記している。主要なイニシアティブは下記の通り:
このレポートでは、エネルギー省予算の概要を報告し、第2レポートで国防省、厚生省、内務省、環境保護庁、および、運輸省を、第3レポートで全米科学財団、米航空宇宙局、商務省、国土安全保障省、および、省庁間R&Dプログラムの予算概要を報告する。
■ I. エネルギー省 ブッシュ政権は、電力系統の改善・近代化、海外エネルギー資源への依存度軽減、環境の保護、省エネ推進、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギー資源や新技術の利用拡大を盛り込んだ、国家エネルギー政策を2001年に提案したが、米国議会における包括エネルギー法案の審議は行き詰ったままである。大統領は今年の年頭教書演説において、こうした審議行き詰りを打破し、今年こそ包括エネルギー法案を可決するよう連邦議員に要請している。大統領はまた、米国経済の成長維持にはエネルギーの安定供給が重要であるため、自分の予算案では水素燃料自動車から再生可能資源にいたる先端技術に確固たる予算を提供すると発言し、エネルギー政策への熱意を示したかにみえたが、非防衛関連プログラムの削減という運命を逃れることは出来ず、2006年度のエネルギー省(DOE)全体予算は、2005年度予算を約4億7,500万ドル(2.0%)下回る234億ドルとなっている。 防衛関連の核プログラムは、昨年よりも伸び率が低いものの、2.5%の増額で93億9,700万ドル。昨年度に数千万ドルの削減を受けたエネルギー関連予算は、2006年度には化石エネルギーと原子力科学技術の予算増額により、全体では約7,370万ドルの増額となっている。一方、昨年増額された環境関連予算の方は5億170万ドル(6.4%)削減され、科学予算は昨年に続く削減となっている。エネルギー省全体の予算内訳は下記の通り: (単位:1,000ドル)
1. エネルギー関連予算の内訳: 省エネルギーの8億4,677万ドル(前年度比2.5%減);再生可能エネルギー・エネルギー効率化の3億5,364万ドル((7.0%減);化石エネルギーの7億5,995万ドル(18.7%増);原子力科学技術の5億1,077万ドル(5.2%増);送配電(Electric Transmission and Distribution = ETD)の9,560万ドル(19.4%減)となっている。以下、@省エネルギー;Aエネルギー効率化・再生可能エネルギー;B原子力科学技術;C化石エネルギー;D送配電の各予算につき解説する。 @ 2006年度の省エネルギー予算は、2005年度予算を2,146万ドル下回る8億4,677万ドル。燃料電池技術が昨年度の二桁台の増額に続いて、2006年度予算でも約866万ドル(11.5%)の増額を受けるほか、バイオマス・バイオ精製R&D予算が前年度の725万ドルから2,180万ドルまで引き上げられる。一方で、分散型エネルギー源、ビルディング技術、産業技術の予算は昨年に続く削減となったほか、自動車技術はほぼ前年度並みの要求となっている。エネルギーR&Dの主要プログラムの予算内訳は下記の通り: (単位:1,000ドル)
燃料電池技術プログラムの増額は、実環境下で燃料電池の性能と耐久性を評価する技術認証(Technology Validation)活動向け支援の増額(630万ドル増)等を反映している。また、バイオマス・バイオ精製R&Dが200.6%という大幅な増額になっているのは、昨年度はエネルギー効率化・再生可能エネルギー予算で計上された一部プログラムが今回、省エネルギー予算へと移譲されたことに起因している。一方、産業技術プログラムは昨年度同様に、林産・ガラス・鋳造・スチール・アルミニウム・鉱業・化学薬品という特定産業との既存プロジェクトが終結に向かっているために予算削減が提案されている。ビルディング技術プログラムでは、住宅ビル統合R&D(かつてのBuilding America)が150万ドル増額されるものの、住宅用・業務用ビルのエネルギー基準、建造物建築躯体R&D(Building Envelope)、窓R&D等は軒並み削減となる。 A エネルギー効率化・再生可能エネルギー(EERE)予算は3億5,364万ドルで、前年度比7.0%(2,670万ドル)の減額要求となっている。大統領の水素燃料イニシアティブを支援する水素技術プログラム予算と風力エネルギー予算が昨年度に続いて増額要求となっているほか、昨年度削減を受けたDOE国立研究所の研究開発活動を支援する施設・基盤整備予算が43.3%増額され1,630万ドルまで引き上げられている。一方、水力発電とバイオマス・バイオ精製R&Dの予算が大幅に削減されるほか、ソーラーエネルギーと地熱技術も各々1.3%、7.8%の削減となる。EEREの主要な研究開発関連予算の内訳は下記の通り: (単位:1,000ドル)
2006年度大統領予算案は、国家エネルギーニーズを効果的に満たすという理由で、幾つかのEEREプログラムの変更を提案している。バイオマス・バイオ精製R&D予算削減の一因は、省エネルギー予算の部分で述べた通り、プログラムの一部が移譲されたことにある。水力発電プログラムの前年度予算比89.7%という大幅削減は、同技術が業界による採用段階まで進み、同プログラムの2006年度終了をDOEが計画していることを反映している。更に、2005年度に300万ドルの新規予算が要求された全米気候変動技術イニシアティブ(NCCTI)プログラムがEEREから姿を消している。DOEの気候変動技術プログラム(CCTP)担当者によると、これは、CCTP調整事務局がDOEの政策・国際問題部(Office of Policy and International Affairs = PI)に置かれることになったためで、2006年度予算の100万ドルはPI予算で要求されているという。 B 原子力科学技術予算は、ブッシュ政権および米国議会が原子力発電を国家の重要なエネルギーミックスの一つとみなしていることを反映し、昨年度の8,280万ドル増額に続いて、2006年度予算でも2,510万ドル増額され、5億1,080万ドルまで引き上げられている。原子力科学技術の研究開発予算も昨年度予算(注:9)を2,040万ドル(11.9%)上回る1億9,100万ドルとなる。研究開発費目では、ブッシュ政権が昨年同様に、原子力発電所最適化プログラムと核エネルギー研究イニシアティブの廃止を望んでいる以外は、第四世代原子力システム・イニシアティブ(Generation IV Nuclear Energy Systems Initiative)に4,500万ドル(前年度比13.4%増)、原子力利用水素イニシアティブ(Nuclear Hydrogen Initiative)に2,000万ドル(124%増)、先端燃料サイクル・イニシアティブ(Advanced Fuel Cycle Initiative)に7,000万ドル(3.8%増)、原子力発電2010プログラムに5,600万ドル(12.9%増)と、全て増額要求となっている。この他、大学の研究・訓練用原子炉の運転およびアップグレードを支援し、優秀な学生にフェッローシップや奨学金を提供する、大学原子炉基盤整備・教育支援(University Reactor Infrastructure and Education Assistance)プログラムの予算も19万ドルの増額で2,400万ドルに引き上げられている。 C 化石エネルギー計画の全体予算は、2005年度予算(6億4,020万ドル(注:10))比18.7%(1億1,970万ドル)増の7億6,000万ドル。内、化石エネルギーR&D予算は8,040万ドル(14.1%)減の4億9,150万ドルとなっている。ブッシュ大統領は2003年2月に、未来の無公害発電所構想としてFutureGenイニシアティブを発表、これに総額10億ドルを約束した。昨年2月に提出した2005年度予算案では、FutureGenを含む大統領のクリーンコール発電イニシアティブ(Clean Coal Power Initiative = CCPI)に前年度比18.1%増の4億4,700万ドルの要求を行ったが、議会承認額は前年度予算を9,600万ドル、大統領要求を1億7,400万ドル下回る2億7,280万ドルにとどまっている。ブッシュ政権は2006年度予算で、CCPIに1,320万ドル(4.9%)増の2億8,600万ドルを要求している。一方、天然ガス技術と石油技術は、全活動が撤廃に向かうことになり、2006年度には環境修復・コントラクト終結・終結によって発生する法的義務を満たす予算として、各々1,000万ドルづつが要求されているにすぎない。化石エネルギーR&D予算の主要な内訳は下記の通り:
D 送配電(ETD)計画の2006年度全体予算は、前年度予算(1億1,860万ドル)比2,300万ドル(19.4%)減の9,560万ドル(注:11)。ETDプログラムは、米国の送配電システムを拡大・近代化する国家努力を指導するもので、安定した電力供給を保証し、停電等の影響を最小限に抑えることを目的としている。2006年度には研究開発予算として、前年度予算より1,970万ドル(21.5%)少ない7,180万ドルが要求されている。研究開発予算の主要内訳は下記の通り:
2. エネルギー省の科学関連予算の内訳:ブッシュ大統領は2004年度、2005年度の予算案でDOE科学関連予算の削減を要求したが、米国議会は逆に科学関連予算を増額し、2004年度には要求額を2億2,550万ドル上回る35億3,640万ドル、2005年度には要求額より1億6,780万ドル多い35億9,960万ドルを承認している。ブッシュ政権は2006年度予算で、これを1億3,680万ドル削減し、34億6,270万ドルまで引き下げることを提案している。科学関連予算の主要費目の内訳は下記の通り: (単位:1,000ドル)
科学関連予算のハイライト:
注釈: 1:2004年の財政赤字は史上最高の4,120億ドルに達したが、経済成長による予想以上の歳入増収で、5,210億ドルという当初推定を1,090億ドル下回った。2005年の財政赤字は、2004年の記録を更新する4,270億ドルになると予想されている。 2:国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)、ネットワーキング・情報技術R&D(NITRD)、および、気候変動科学プログラム(CCSP)がすべて削減となる。また、2005年度予算案に盛り込まれ、昨年始めて150万ドルの予算がついた気候変動技術プログラム(CCTP)は省庁間イニシアティブから外されている。 3:2005年度予算教書でブッシュ大統領がNo Child Left Behindといった教育改革への予算増額を求めていたことを考えると、今回の廃止・大幅削減の対象プログラムの約3分の1が教育関連プログラムであることは、特筆に値する。 4:ブッシュ大統領は2005年度予算で65のプログラムの廃止を求めたが、実際に廃止されたのは7プログラムであった。 5:内、防衛関連R&D予算は総予算の約56.8%を占める752億800万ドル(前年度比0.4%増)で、非防衛関連R&D予算は残りの570億960万ドル(前年度比0.7%増)。 6:AAAS Preliminary Analysis of R&D in the FY 2006 Budget の算出。 7:ブッシュ政権は2005年度FS&T予算として前年度予算を2億ドル以上下回る604億1,300万ドルを要求したが、議会はこれを616億ドル9,600万ドルに増額した。 8:省庁間プログラムである大統領の水素燃料イニシアティブの2006年度総予算は2億6,000万ドルで、リード機関であるDOEの予算は2億5、770万ドル。省エネルギー予算からの8,360万ドルのほかに、エネルギー効率化・再生可能エネルギー予算で9,910万ドル、原子力科学技術予算から2,000万ドル、化石エネルギー予算で2,200万ドル、そして、科学予算の基礎エネルギー科学から3,300万ドルとなっている。 9:ブッシュ政権は2005年度予算で、研究開発費を前年度3,394万ドル減の9,600万ドルを要求したに過ぎなかったが、行政府の希望とは裏腹に、議会がこれを大幅に増額、1億7,060万ドルを計上した。従って、2006年度予算は2005年度大統領要求額と比べると、9,500万ドルの増額要求となる。 10:ブッシュ政権は7億2,8990万ドルを要求したが、議会によって大幅に削減され、同レベルとなった。 11:ブッシュ政権の2005年度要求額は9,090万ドルであった為、昨年度要求よりは470万ドルの増額となる。
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