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2004年3月16日 ブッシュ政権は、昨年、水素燃料イニシアティブを打ち出し、燃料電池車路上実証プロジェクトや関連の研究開発の推進やIPHEをはじめとする国際協力も積極的に進めてきている。 しかし、最近公表された全米アカデミーや米国物理学会の報告書において、“燃料電池はまだ解決すべき課題が多く存在する”、“水素燃料は長期的な解決策であり短期的な対策も重要”との指摘がなされ、さらに、メディアもそれをあおる等の動きがあり、周りの様子を見極める必要があるとDOEが判断したからであると言われている(基本的に学者もメディアも民主党寄り)。 燃料電池については、昨年、ブッシュ大統領が“水素燃料イニシアティブ”を打ち上げ、先日議会に提出された2005年大統領予算でも前年比24%増の319百万ドルと大幅増となっており、DOEが中心となってその具体化が進められているところである。しかし、この1月に第2のアポロ計画を期待してブッシュ大統領が発表した“月、火星有人飛行計画”に国民の多くが反対であったことから、以後、政権は見向きもしなくなったという状況を目の当たりにして、DOEも水素燃料イニシアティブの着実(選挙に有効)な推進に関して、間違いの許されない苦しい舵取りを迫られている状況にあるのではなかろうか。 ここでは、2005年大統領予算、全米科学アカデミー及び米国物理学会のそれぞれの報告書、そして、下院科学委員会における議論、そして、DOEの対応を紹介することとする。
1.水素エネルギー関連大統領2005年予算 水素エネルギー関連2005年の大統領予算要求額は、$319.2百万ドルと議会で承認された2004年予算に比して24%の増加(2004年大統領予算要求に比べると17%増)と大きな伸びを示している。 以前からあるVehicle Technology計画、2003年からスタートしたFreedomCAR計画、そして、2004年にスタートしたHydrogen Fuel計画が混じった形でわかり難い予算であるが、基本的に、以下の通り、Hydrogen Fuel 計画とFreedomCAR計画に整理される。とりわけHydrogen Fuel Initiativeについては、227.8百万ドル、対前年比36.7%増と大幅な伸びとなっている。 さらに、項目毎に見ると、Hydrogen TechnologyではSafety&Standard関連が18.0百万ドル(前年比3倍)、Fuel CellではStack部品関連が30.0百万ドル(約2割増)と昨年に比べて大きな伸びを示している。 (百万ドル)
2.National Academyの報告書の発表 この2月、全米科学アカデミーが“水素経済;機会、コスト、課題と研究開発の必要性”と題する報告書を発表した。これはDOEがアカデミーに対して、DOEの水素関連の戦略、計画について提言を求めたものに対する検討結果である。その提言は、@水素エネルギーは長期的なエネルギー問題に対する解決策であり、短期的な対策とのバランスが重要である、A車載用水素貯蔵システムのR&Dを重視すべき等下記の11の項目からなるものであった。
しかし、この報告書に対してメディアは、“水素自動車はまだまだ不確実(San Francisco Chronicle)”、燃料電池自動車は予想以上に遠い(Greenwire)“等一様に水素経済社会の構築は困難なものであると書き立てている。
3.米国物理学会(American Physical Society)の報告書 米国物理学会より、ブッシュ政権の水素イニシアティブを分析した報告書が3月1日に公表された。この報告書は、“現在最も有望視されている水素エンジン技術でさえも、既存技術と競合するためには、そのコストや性能を10倍から100倍も改善する必要がある。そして、その原因としては、水素燃料コストがガソリンの約4倍であること、水素燃料貯蔵タンク用の適切な材料が無いことだ。”と指摘している。 そして、このような深刻な技術的なギャップを埋めるためには、技術改良に基づく改善ではなく科学的なブレークスルーが不可欠であり、@水素燃料イニシアティブにおいては基礎科学が一層重視されるべきであること、A水素技術諮問委員会の委員には科学的問題に精通した専門家が含まれること、B燃料電池自動車の導入が2020年以降にずれる場合に備え、化石燃料経済と水素経済の間をつなぐ“橋渡し”の技術にも留意すべき、C水素イニシアティブが省エネ、再生可能エネルギー関連研究に取って代わるべきではないとしている。 ここ数年、米国のScientistsの間では、“連邦政府の科学技術予算がNIHを中心とするバイオ分野に偏重したものとなっており、物理、化学、コンピュータ科学、工学向けの予算は実質ベースで減少している。これはひいては米国の技術力の低下をもたらす。”との警鐘が鳴らされていたことにも関係する。せっかく予算増を期待した水素イニシアティブも、DOEでは、いきなり実証試験等に予算配分が行われ、基礎研究分野における予算配分があまりなされていないことに対する、科学者たちの反感も背景にはありそうである。
4.水素イニシアティブに関する下院科学委員会ヒヤリング 3月3日、Boehlert議員(共、NY)が議長を務める下院科学委員会においてブッシュ大統領の水素イニシアティブを検討する公聴会が開催された。この公聴会では、DOEのGarman次官補、全米科学アカデミーの水素検討委員会のRamage委員長、そして米国物理学会エネルギー小委員会のEisenberger委員長の3名が以下の通り証言を行った。 DOEのGarman氏は、@全米科学アカデミーの報告書の提言はすでに取り込んでDOEの計画を進めつつある、A水素社会構築というチャレンジングな課題には当然困難がつきものなのにメディアがいまさらのようにそれを問題視することは疑問、B水素・燃料電池プログラムには十分な予算配分が行われているように見えるが、議会によるEarmark(指定交付金)化が行われており実際には予算は不足していると発言。 また、全米科学アカデミーのRamage委員長は、DOEに対して、@重点を開発から基礎研究に移すべきである、A水素エネルギーの社会への浸透を後押しする方策を議論すべきである、B水素エネルギーのみでなく他のエネルギーも含めた均衡の取れた計画を策定するべきであると提言しているとの発言。 米国物理学会Eisenberger委員長は、@水素イニシアティブの成功には科学的なブレークスルーが必要であり行政府は基礎研究の強化を進めるべき、AそのためにDOE科学局の果たす役割は大きい、B時期尚早の大型実証プロジェクトは水素経済の基盤形成に役に立つものではなくDOEはもっと基礎研究に予算を投入すべきと指摘した。 短期的及び中長期的な取組みに関しては、DOEも水素のみでなくソーラ、バイオマス、風力のエネルギーも重要であると認識(ただし、議会のEarmarkがこれの予算を圧迫しており問題)、実証試験はデータ取得のための限定的なものであり、基礎研究とのバランスも考慮していると反論。また、実用化重視か基礎重視との議論については、全米科学アカデミーもバスを用いた試験は事業化を推進するとともに、研究者も益するとの認識に至っている。
5.DOEの“The Hydrogen Posture Plan”の公表 DOEは、この3月10日に、ブッシュ大統領のHydrogen Initiativeを具体的に推進するために、各種R&Dの位置づけを明確にすることを目的として、“水素への取組み計画”を公表した。 この計画は、水素社会の実現に向け、@現在から2012年頃;技術開発段階、A2010年から2025年頃;初期市場拡大段階、B2015年から2035年頃;市場拡大・インフラ整備段階、C2025年以降;水素経済段階、という4つのフェーズに分けて、それぞれの段階において解決すべき課題は何か、そして、そのためにはいつ頃、どのようなR&Dが必要となるのか等を明確にしたものである。 報告書は、従来から進めてきた水素、燃料電池関連の研究開発を再構築するとともに、DOE内の関連部局、省庁間の連携強化や政府と民間の役割等についての考え方が示されている。また、前述の全米科学アカデミーで指摘された事項も踏まえた内容のものとなっており、関係者の意見を広く聞きながら進めるというDOEの姿勢が示されているといえよう。 Top Page |