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2006年1月前半分 ■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった 1月13日号 クリーンエネルギー使用拡大のオプションを検討する、西部州知事連合の諮問委員会 2015年までにクリーンエネルギー30,000メガワット(MW)を電力系統に連系するという目標達成の為のオプションを検討することになっている西部州知事連合(Western Governors' Association = WGA)のクリーンかつ多様なエネルギー諮問委員会(Clean and Diversified Energy Advisory Committee = CDEAC)が1月10日、先端コール技術、バイオマス、エネルギー使用合理化、地熱、および、ソーラー(注1)の各タスクフォースが作成した報告書を発表した。今回発表となった報告書に盛り込まれている主要提言は下記の通り:
天然ガス、風力、および、送電に関する報告書は、ここ数週間の内にタスクフォースによて完成される見通しであるという。CDEACでは、タスクフォース作成の報告書をベースにして提言を作成し、それを今年6月にアリゾナ州セドナ市で開催される2006年WGA年次会での検討に付す予定である。(WGA Press Release, January 10, 2006; Greenwire, January 11, 2006) ブッシュ大統領、2007年度予算でアジア太平洋パートナーシップ活動支援に5,200万ドル要求 オーストラリアのシドニーで開催された、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(Asia Pacific Partnership on Clean Development and Climate = APP)の発足式に出席したSamuel Bodmanエネルギー長官は1月12日、ブッシュ大統領が2007年度予算要求でAPP関連活動を支援するために5,200万ドルを要求する予定であると発表した。Bodman長官によると、このAPP予算要求は、米国政府が気候変動技術に拠出する年間30億ドルの予算、および、米国民間部門によるエネルギー効率改善や排出削減への数十億ドルの自主投資を補足することになるという。 Bodman長官はこの機会を利用して、オーストラリアのJohn Howard首相やIan MacFarlane産業資源観光長官と二ヶ国会談を行ったほか、中国から訪れていた国務委員・秘書長 華建敏とも二ヶ国会談を行った。(DOE News Release, January 10, 2006; January 12, 2006) ウッドロー・ウィルソン国際センターの報告書、更に厳格なナノテクノロジー監視法の必要性を主張 ウッドロー・ウィルソン国際センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)の新興ナノテクノロジー・プロジェクト(Project on Emerging Nanotechnologies)が1月11日に、ピュー慈善信託(Pew Charitable Trust)からのグラントで作成した 『ナノテクノロジーの影響管理(Managing Effects of Nanotechnology)』 という報告書を発表した。同報告書では、現行の規制枠組みをナノテクノロジーに適用することの長短所を検討し、ナノテクノロジーを監視する新アプローチを提唱している。 同報告書の筆者であるJ. Clarence Davies氏(注2)は、ナノテクノロジーの潜在的な悪影響に対処し、引き続き同技術の開発を推進するためには、[現在よりも]積極的で優れた監視システム、および、新資源の投入が必要であると主張している。あらゆる連邦政府規制を考察し、現在利用可能な監視オプションを検討したDavies氏の結論は下記の通り: 1. 既存規定でナノテクノロジーの問題に対応することは困難である ナノテク材料を規制・査察する為の法的根拠を提供する既存法令 …有毒物質規制法(Toxic Substances Control Act = TSCA)、労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act)、食品薬品化粧品法(Food, Drug and Cosmetic Act)、および、クリーンエア法・クリーンウォーター法・資源保全回収法(Resouce Conservation and Recovery Act)等の環境法… が存在するものの、こうした既存法令は全て、法的権限の欠落、または、深刻な[人的・財政的]資源不足に苦しんでいる。既存法令の法的根拠では弱すぎて、ナノテクノロジーの潜在的リスクを確認し、一般市民をリスクから守ることは出来ない。 2. ナノテクノロジーの潜在的リスクを管理する新法令を必要とする可能性がある ナノ製品が容認しがたい(unacceptable)リスクを引き起こす心配がないことを示す持続可能な計画の提出を、法律で製造業者に義務づけるべきである。新法案可決は不可能ではないものの、それに対する政治的障壁は非常に大きい。しかしながら、既存法をナノテクノロジーに適用することの欠点を考慮すれば、新法令設定に努力する価値はあると言える。 3. 新たなメカニズムと新たな組織能力(institutional capability)が必要である ナノテクノロジーの有効利用を奨励するため、(i)政府研究グラントを拡大し;(ii)産業界に財政インセンティブを与えるよう税制を改訂し;(iii)連邦・州政府の調達計画を活用し;(iv)規制インセンティブを制定する。また、ナノテクノロジーの悪影響に首尾よく対応するためには、(a)ナノテク分野の国際強調(international harmonization);(b)テクノロジー予見力(forecast ability)の向上;(c)ナノテクの健康・環境面での悪影響に重点を当てた研究;(d)一般市民の参加、といった新たな組織能力も必要となる。 一方、全米ナノテクノロジー調整局(National Nanotechnology Coordination Office)のClayton Teague局長や食品医薬品局(Food and Drug Administration)高官等は、現在入手可能な情報から判断すると、現行規制は殆どのナノテク製品を十分に管理できるはずだと反論している。(Woodrow Wilson International Center News Release, January 13, 2006; Washington Post, January 11, 2006; Managing the Effects of Nanotechnology) 1:ソーラー・タスクフォースの作成した報告書については、2005年9月22日号デイリーレポートを参照されたし。 2:同氏は、ホワイトハウス環境問題委員会(Council on Environment Quality)の上級スタッフとして TSCAと呼ばれることになる法令の原文作成を担当したほか、George H. W. Bush元大統領の下で環境保護庁(EPA)次官を務めた経験者。現在は、未来の為の資源(Resources for the Future)の上級特別研究員で、新興ナノテクノロジー・プロジェクトの顧問で、環境関連研究政策の第一人者と見なされている人物。
1月12日号 経済協力開発機構(OECD)、米国の環境実績評価を発表 経済協力開発機構(OECD)が1月10日に、米国の環境実績を査定評価する新報告書 『OECD環境実績評価:米国版(OECD Environmental Performance Reviews: United States)』 を発表した。OECDは1996年に、米国の環境実績評価を一度実施しており、これが二度目の査定評価となる。同報告書では、米国が(i)大気質や水資源、および、生物多様性をどのように管理しているか;(ii)環境問題を自国の経済・財政政策に如何に統合しているか;(iii)国際的な環境コミットメントをどれほど満たしているか、を査定している。 OECDの報告書は、1996年以来、米国が環境面でかなりの実績を達成したことを評価する一方で、環境保護や国民の健康保護、および、経済繁栄を同時に保証する一策として、エネルギーと水の使用合理化を図るべきであると提言している。また、気候変動や生物多様性、有毒化学品に関する世界的懸念への対応で米国はリーダーシップを取る必要があるとも進言している。1996年以来の米国の環境実績、および、米国への提言は下記の通り: 1. 実績
2. 提言
(OECD News Release, January 10, 2006) Patakiニューヨーク州知事、年頭教書演説でエネルギー政策を概説 George Patakiニューヨーク州知事(共和党)は1月4日に2006年の年頭教書演説を行なったが、この演説でエネルギー問題にかなりの時間を割いている。Pataki州知事は、海外石油への依存が同州だけでなく全米の勤労者世帯や雇用者の経済力を阻害し、環境に悪影響を与えていると語り、今こそ海外石油依存から脱出するべき時であると主張している。 Pataki州知事は、環境保護において全米のリーダー格 …ニューヨーク州は発電所の汚染を削減するために全米で最も厳格な酸性雨規制を導入したほか、全米初のグリーン建築物税額控除制定、北東部7州による地域別温室効果ガス先導策調印等の実績がある… であるニューヨーク州を、輸入エネルギー依存削減でも全米のリーダーとすること、更には、クリーンな再生可能エネルギー研究や製品開発および雇用創出の世界的センターにすることを提言している。これを実現するために州知事が提案した施策は下記の通り:
(Governor Pataki 2006 State of the State Address, January 4, 2006)
1月11日号 シドニー会合に先立ち、Dobriansky国務次官とConnaughtonホワイトハウス環境問題委員長が記者会見 1月11〜12日にシドニーで開催予定のクリーン開発と気候に関するアジア-太平洋パートナーシップ(Asia-Pacific Partnership on Clean Development and Climate)第1回会合では、エネルギー省(DOE)のSamuel Bodman長官、国務省のPaula Dobriansky次官、および、ホワイトハウス環境問題委員会(Council on Environmental Quality = CEQ)のJames Connaughton委員長が米国代表団の指揮を取るが、この会合に先立ち、Dobriansky次官とConnaughton委員長が1月6日に記者会見を行なった。 記者会見の席で、Dobriansky次官とConnaughton 委員長は、オーストラリア・中国・インド・日本・韓国・米国というアジア-太平洋の主要6ヵ国の自主的パートナーシップは、京都議定書を補足するものであって、京都議定書に取って代わるものではないことを強調した。この会合では、メタン回収、クリーンコール発電、原子力発電、水素輸送、送配電、電気製品のエネルギー効率等が話し合いの焦点になるという。 Connaughton委員長は、大気汚染やエネルギー供給確保、貿易や経済開発といった温室効果ガス以外の問題をも検討するこの6ヵ国サミットが京都議定書以上の効果をもたらすものと期待していると発言したほか、参加国が自国の状況に適った地球温暖化対策を持ち込むアプローチの方が、参加国全部に一律型の(one-size-fits-all)アプローチを強いるよりも遥かに有効であると主張した。また、ブッシュ政権の2007年度予算案をほのめかすように、米国は気候調和型技術に2006年度(30億ドル)以上の予算を拠出する計画であると語った。(Greenwire, January 9, 2006) Lux Research社、ナノテク・ベンチャーキャピタルの実態を調査した報告書を発表 Lux Research社が、ナノテクノロジーへ投じられるベンチャーキャピタル(venture capital = VC)に関する新報告書 『Making Sense of Nanotech Venture Capital』 を発表した。同報告書の筆頭著者であるMatthew Nordan氏によると、2005年のナノテクVC投資は、Nanomix社やNanosys社といった会社の開発後期段階技術に大型投資が行なわれた為にかなり増大したものの、企業や政府のナノテク研究開発投資と比較すると僅か19倍の1にすぎず、未だにナノテク投資総額の極々一部でしかないという。 Lux Research社ではナノテクVCの実態を調査するために、1995年以来ナノテク・スタートアップ会社に投じられた組織的(institutional)なVC投資 …13ヵ国に及ぶスタートアップ会社143社へのVC投資258件… を網羅する包括的なデータベースを構築したほか、VC一流会社28社の代表にナノテク・スタートアップ投資での経験や期待をインタビューしている。主な調査結果は下記の通り:
(Lux Research Press Release, January 10, 2006)
1月9日号 太陽光発電技術に多大なベネフィットをもたらすことが期待されるナノ結晶 ロスアラモス国立研究所(LANL) の研究者等が、光量子に反応して複数の電子を放出する「キャリア増倍(carrier multiplication)」という現象は、セレン化鉛のナノ結晶だけに限定されるのではなく、複数種のナノ結晶でも起こることを発見した。この発見は、これらのナノ結晶を光電池に用いた場合に、現在の太陽光電池技術を上回る発電量が得られる可能性があることを意味している。 Nature Physics and Applied Physics Lettersに先頃発表された論文では、セレン化カドミウム他のナノ結晶でも、非常に高効率でキャリア増倍が起こることを報告している。LANLの研究結果は、セレン化カドミウムによく似たテルル化カドミウムのような在来型太陽電池材料を活用した実用的な光起電力技術が実現化する可能性を示している。更に、キャリア増倍の他の利用方法として、太陽光利用の燃料生産技術 …具体的には、光触媒を使う水分解による水素生産技術… への応用も考えられるという。(Los Alamos National Laboratory News Release, January 4, 2006) 5500万年前に海流の逆流を巻き起こした地球温暖化が再発する危険性 スクリップス海洋学研究所の新たな研究により、世界中の深海で海流の逆流を巻き起こした5500万年前の地球温暖化の歴史的証拠が見つかった。5500万年前に地球温暖化で変化した海流は約2万年もの間、元の方向に戻らず、深海底に生息する海洋生物の絶滅や地上の哺乳動物の大移動等を引き起こしたという。この研究は、現在の大気中の二酸化炭素の状況が5500万年前の地球温暖化時に類似しており、将来の気候変動や海流の変化が懸念されるという不吉な結論を引き出している。 研究チームは世界各地の深海部14ヶ所から採集した単細胞海洋生物である有孔虫の1種nuttalides truempyiの炭素同位体を分析することによって、海底の温度や生息した海域の栄養分を算出し、それから、深海水の年齢や海流の方向を推定している。研究チームが導き出した主要な結論は下記の通り:
(Environmental News Service, January 5, 2006) 生体細胞とエレクトロニクスの相互作用を高めるナノコーティング カリフォルニア大学サンタバーバラ校の科学者等が、電子機器と生体細胞との相互作用性を高める新たなナノコーティングを開発した。微小電子化学機器(micro-electrochemical device)と呼ばれる電子機器によって、現在では、ラット心筋細胞を使ってミニロボットを動かしたり、神経細胞に義肢を直接つなぐことが可能となっているが、このテクニックの主要な問題点は、生体細胞と電子機器が結合するまでに長時間かかるということであった。 カリフォルニア大学の研究チームは、50〜200 nmの孔のあいた厚さ25〜750 nmの二酸化チタンの多孔性薄膜を作る工程を開発することによって、この問題の解決を試みている。研究チームによると、この工程はチタン薄膜を80℃の過酸化水素ですすぎ、自然乾燥させるだけのごく簡単なものであるが、薄膜の孔により表面積が増加するため、このナノコーティングを使った場合の電子機器と生体細胞の結合速度は、二酸化シリコンや窒化ケイ素を使う従来法の4〜5倍も優れているという。同調査報告は1月28日号のNanotechnology誌で発表される予定である。(UPI Nano World, January 3, 2006 )
1月6日号 上院に提出された「国家イノベーション法案」 競争力協議会(Council of Competitiveness)が 『イノベート・アメリカ(別称、パルミサーノ・レポート)』 を発表してから丁度1年目にあたる2005年12月15日、John Ensign上院議員(共和党、ネバダ州)とJoe Lieberman上院議員(民主党、コネチカット州)が、 Lamar Alexandria議員(共和党、テネシー州)やJeff Bingaman議員(民主党、ニューメキシコ州)を始めとする計14名の共同スポンサー(注1)を得て、「2005年国家イノベーション法案(National Innovation Act of 2005:上院第2109号議案)」を提案した。同法案の主な条項は下記の通り: 1. イノベーションの促進
2. 科学プログラム、教育プログラム、ヘルスケア・プログラムの合理化
3. イノベーション奨励インセンティブ
4. 国防省関連
5. 司法関連事項
(Manufacturing and Technology News, December 22, 2005; Text of S. 2109, December 15, 2005) 1:12月16日以降、Hillary Clinton上院議員(民主党、ニューヨーク州)やOlympia Snowe上院議員(共和党、メイン州)等計8名も共同スポンサーに加わっている。 2:この予算額はNSF全体の予算であって、NSFの研究開発費ということではない。NSF予算は、2002年に成立した『2002年全米科学財団認可法令』により、2002年度から2007年度までの5年間で予算倍増が認められたものの、実際に計上された予算は認可額を大きく下回り、2006年度は認可額より約30億ドル少ない56.4億ドルに留まっている。
1月5日号 中国と英国、炭素隔離プロジェクトの協定に調印 China Daily紙によると、中国と英国は2005年11月に、炭素隔離プロジェクトに関する協定に調印したという。石炭火力発電所から放出される炭素を回収し、これを廃坑や油井または深海に貯留する技術を検証する研究プロジェクトを支援するため、英国は中国の科学者に610万ドルを供与する。英国からのこの供与金はまた、炭素隔離のコストを査定評価し、同技術の潜在的市場を確認する努力をも支援することになるという。 同紙によると、英国と中国は同研究プロジェクトの終了後、炭素隔離技術を利用した「無公害の(zero-emission)」石炭火力発電所の建設でも協力する計画であるという。(Global Warming Today, January 3, 2006) 環境保護庁、2006年の再生可能燃料使用基準を2.78%に設定 環境保護庁(EPA)が2005年12月22日、2006年に米国で販売されるガソリンの2.78%を再生可能燃料で賄うことを義務づける新規制 『燃料および燃料添加物規制:2006年の再生可能燃料使用基準義務要件(Regulation of Fuels and Fuel Additives: Renewable Fuel Standard Requirements for 2006)』 を発表した。 2005年8月に成立した『2005年包括エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)』では、2006年から2012年までの再生可能燃料使用基準(Renewable Fuels Standard = RFS)を定め(注1)、2012年までに75億ガロンの再生可能燃料市場を構築するという目標の達成に向けた規制を2006年8月までに策定するようEPAに義務づけている。しかしながら、EPAでは、様々な要素が絡む複雑なRFSプログラムの規制を2006年8月の期限までに策定することは不可能であると判断し、代わりに、『2005年包括エネルギー政策法』の定める2006年の最低使用量を義務づける規制を先ず公布することとなった。 EPA発表の規制では、エタノールやバイオディーゼルといった様々な再生可能燃料が使用され得るとしているほか、精製業者・輸入業者・ガソリン混入業者といった個々の利害関係者に最低生産水準を義務づけるのではなく、業界全体としての目標達成を義務づけている。従って、同プログラムの成功度は、消費者に販売されたガソリン総合量に占める再生可能燃料のパーセンテージで判断されることになる。2006年には義務規制なしでも、再生可能燃料生産量が2.78%を超える40億ガロンに達する見通しであるため、EPAは、今回発表されたアプローチは2006年規制としては十分に有効であると主張している。仮に2006年に2.78%のRFSが達成されなかった場合には、その未達成分を2007年に埋め合わせるよう業界に義務づけることになるという。(Greenwire, January 3, 2006; Alternative Transportation Fuels Today, January 4, 2006) 1:再生可能燃料使用量は、2006年で40億ガロン、2007年が47億ガロン、2008年が54億ガロン、2009年は61億ガロン、2010年が68億ガロン、2011年が74億ガロンで、2012年には75億ガロンと設定されている。 Top Page |