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2005年9月後半分 ■ エネルギー・環境・産業技術関連では、以下のような動きがあった 9月30日号 プリンス・エドワード・アイランドに新設されるカナダ風力エネルギー研究所 カナダ政府がプリンス・エドワード・アイランド州のNorth Capeに、独立した非営利機関として、カナダ風力エネルギー研究所(Canadian Wind Energy Institute = CanWEI)を新設すると発表した。プリンス・エドワード・アイランド州政府がCanWEI設置場所として、既存の大西洋風力実験所(Atlantic Wind Test Site)用地を提供し、カナダ政府が同研究所の創設費として355.8万カナダドルを拠出するという。様々な実験所、ワークショップ・スペース、および、客員研究員用宿泊所を収容する9,500平方フィートの新ビルディングは2006年に完成の見通しである。運営費としては、カナダ天然資源省が当初2年間、年間100万ドルを供与するほか、プリンス・エドワード・アイランド州政府が年間約28.5万ドルを拠出する予定となっている。カナダの風力発電・風力テクノロジーの開発支援を目的とするCanWEIでは下記に4分野に焦点をあてる:
(Atlantic Canada Opportunities Agency News Release, September 23, 2005) 全米科学財団、『2003年度大学研究開発費』という統計報告を発表 全米科学財団(National Science Foundation = NSF)が今年8月に、米国の大学における研究開発(R&D)支出を調査分析した報告書を発表した。『2003年度大学研究開発費 (Academic Research and Development Expenditures: Fiscal Year 2003) 』によると、米国大学による2003年のR&D投資総額は400億ドルで、その59%にあたる237億6,000万ドルが生命科学分野に支出されたという。 同報告書では、R&D総額、生命科学R&D投資額、R&D総額に対する生命科学R&D投資の率についての州別ランキングも報告している。各々のトップ5位は下記の通り:
NSFの同報告書全文はhttp://www.nsf.gov/statistics/nsf05320/pdfstart.htmで入手可能。(SSTI Weekly Digest, September 26, 2005)
9月29日号 気候変動に関する政府間パネル、二酸化炭素の回収・貯留に関する新報告書を公式発表 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change = IPCC)は9月26日、カナダのモントリオール市で開催されたIPCC第24回会合において、二酸化炭素(CO2)隔離が地球温暖化の影響抑制で果たしうる効果を詳述する報告書を発表した。『二酸化炭素の回収・貯留に関するIPCC特別レポート (IPCC Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage)』では、発電所から放出されるCO2を隔離することは、気候変動の脅威軽減という点で重要な役割を果たす可能性があるものの、その実現は早くとも21世紀中盤になろうと指摘している。同報告書の主要な調査結果は下記の通り:
(Nature Magazine Online, September 27, 2005) 下院エネルギー・商業委員会、Barton委員長提案の新エネルギー法案をスピード可決 下院エネルギー・商業委員会は、Joe Barton委員長(共和党、テキサス州)が9月26日に提案したばかりの「2005年米国安全保障の為のガソリン法案(下院第3893号議案:法案の概要はNEDO Washington Daily Report 9月27日号を参照されたし)」を、9月29日に発生投票でスピード可決した。 同委員会は16時間におよぶマラソン審議を行い、数々の修正法案を検討している。可決された主な修正法案は下記の通り:
一方、民主党の下院議員が提出した、FTCにガソリン便乗値上げを規制する堅固な権限を付与し、連邦政府の「戦略精製備蓄(strategic refinery reserve)」を創設するという修正法案;自動車の燃費基準を強化する修正法案;再生可能エネルギー使用基準(renewable portfolio standard)を設置する修正法案は、ほぼ党派ラインで否決された。(Environment and Energy Daily, September 29, 2005)
9月29日特別号 ホワイトハウスのMcClellanスポークスマン、省エネ戦略の詳細を説明 ブッシュ大統領は9月26日にエネルギーの節減を米国民に呼びかけたばかりであるが、翌日の9月27日、ホワイトハウスのScott McClellanスポークスマンは、ハリケーン被災地に向かう大統領専用機「エアフォース・ワン」内で行なった記者会見で、ホワイトハウスが実施する省エネ計画の詳細について語った。McClellan氏の発言概要は下記の通り: 昨日、大統領は米国民に、エネルギー節減のために出来ることを実施するよう奨励した。省エネの奨励は、同政権がこれまでにも常に行なってきたことである。2001年を思い起こし(注1)てもらえれば、同政権が (i)燃料電池開発を促進するグラントの給付;(ii)先進エンジンの開発奨励;(iii)自動車用やビル用の水素技術開発の奨励、といった数々の省エネ推進活動を実施してきたことが明白である。また、ホワイトハウス職員も当時、省エネおよびエネルギー使用合理化のために、照明やコンピューターの電源を消したり、サーモスタットの設定を上げたりという努力を行なった。これらの情報は全てウェブで入手可能である。
(Greenwire, September 29, 2005; White House Press Release, September 27, 2005) 1:Greenwireによると、McClellan氏の指摘とは裏腹に、2001年5月の記者会見で当時のホワイトハウス・スポークスマンであったAri Fleischer氏は、省エネの必要性を軽視する発言を行なったという。エネルギー問題に対応するため、米国人はライフスタイルを変えるべきであるかという記者の質問に対し、Fleischer氏は「絶対に変える必要はない。大統領はそれがアメリカ流の生活であると信じている」と回答している。
9月27日号 フォード自動車のWilliam Ford会長、エネルギーサミット開催を大統領に要請 フォード自動車のWilliam Ford会長がブッシュ大統領に、政府高官、自動車メーカー、部品供給業者、燃料供給業者、および、消費者を一堂に会したエネルギーサミットの開催を求める書簡を送付した。同サミットでは、代替燃料へと移行する為に自動車メーカーが採用できる戦略を検討することが重点となる。 GMのスポークスマンも、米国はエネルギー源の多様化を志すべきであり、石油から水素への移行を図る大胆なエネルギー政策を取る必要があると語り、フォード自動車のイニシアティブに支持を表明した。(Wall Street Journal, September 26, 2005) アラスカ大学の調査研究、年々早くなる雪解け時期はアラスカ州にとり脅威であると指摘 アラスカ大学フェアバンク校が全米科学財団(National Science Foundation = NSF)の支援を受けて実施した新たな調査研究は、アラスカ北極圏では雪解け時期が年々早まり、これが同地域の気候変動を加速化させていると報告している。同研究報告書の主要著者であるTerry Chapin生態学教授は、気候変化の一つの要素が他の変化を誘発し、それが更なる変化を起こしで、アラスカ北極圏の温暖化はコントロールが効かなくなっていると指摘している。 オンライン誌『Science Express』に発表されたこの調査報告により、春期雪解けは10年毎に2.5日づつ早まっていることが明かになっている。露出した地面が吸収した熱は大気中にエネルギー(1立法メートルあたり約3ワットのエネルギー)を放出するため、アラスカ北極圏の大気が年々暖かくなっており、また、同地域の木や潅木が北方移動を今後も続けるようであれば、夏期の温暖化は2倍から7倍も増進する可能性があるという。(Washington Post, September 26, 2005) Barton下院エネルギー・商業委員長、包括的なエネルギー新提案を発表 下院エネルギー・商業委員会のJoe Barton委員長(共和党、テキサス州)が先週末に、下院への提出を予定している「2005年米国安全保障の為のガソリン法案 (Gasoline for America's Security Act of 2005)」の検討素案(discussion draft)を公表した。同提案は精製業界に多様なインセンティブを提供する内容であるため、一部の議員等は、記録的な利益を享受する業界への更なるベネフィット供与に眉をひそめている。Barton委員長が発表した検討素案の概要は下記の通り:
(Environment and Energy Daily, September 26, 2005)
9月26日号 米国陸軍、SFC-C20 MPと呼ばれる直接メタノール型燃料電池を試験中 米国陸軍の通信用電子機器研究開発センター(Communications-Electronics Research Development and Engineering Center = CERDEC)は、スマートフュエルセル社とデュポン社が共同開発したSFC-C20 MPと呼ばれる可搬型の直接メタノール型燃料電池技術の試験を行っている。この燃料電池システムは最新型 (第4世代) の導電膜技術を導入しており、これによって、出力密度が高まると同時に、メタノールが燃料電池膜を透過するクロスオーバーが低減されるという。さらに、従来の直接メタノール型燃料電池システムよりも起動時間が短いというメリットがある。(FuelCellsToday, September 23, 2005) スペースシャトルの打上げはカトリーヌの影響で更に2ヶ月延期され、来年5月以降 米航空宇宙局(NASA)のMichael Griffin局長は9月21日に、次回のスペースシャトル打上げは更に2ヵ月遅れ、早くても2006年5月になるであろうと発言した。ハリケーン・カトリーヌの影響で、ミシシッピ州にあるStennis宇宙センターやニューオーリンズのMichoud組立施設に働く作業員の多くが未だにホームレスであることが、この遅延の原因であるという。Griffin局長は、Michoud組立施設の作業員37名がカトリーヌ通過中に発電機とポンプを稼働し続けていなかったなら、シャトルは再び飛行することが出来なかったかもしれないと語り、37名の勇ましい行動を称賛した。 同局長によると、NASAは2010年までに18回のシャトル打ち上げを依然として予定しているという。この内の17回は国際宇宙基地の組立てを完成させる為のミッションであり、残りの1回がハブル宇宙望遠鏡の修理改善ミッションとなる。現行シャトルで2010年までに国際宇宙基地を完成できない場合には、新たに開発中の「有人探査機(crew exploration vehicle)」を使って宇宙基地を完成させる意向であるという。(Washington Post, September 22, 2005) 上院本会議、圧倒的多数で先端技術計画(ATP)を支援 2006年度商務省・司法省・科学関係歳出予算法案(注1)を審議中の上院本会議に、Tom Colburn上院議員 (共和党、オクラホマ州) は先端技術計画 (Advanced Technology Program = ATP) 予算を全額撤回する修正法案 (上院第1648号修正法案) を提出したが、9月14日には同修正法案を棚上げにする動議が68対29で可決され、上院におけるATP廃止計画は今回も失敗に終わった。 ATP廃止に投票した29議員の内訳は、共和党議員が25名で、民主党議員は4名。ATP維持に投票した68名の内訳は、共和党議員が28名で民主党議員40名であった。商務省予算を管轄する歳出小委員会のRichard Shelby委員長(共和党、アラバマ州)およびBill Frist上院共和党院内総務(テネシー州)はATP支持に回っている。 上院本会議は、1,400万ドルのATP予算を盛り込んだ2006年度商務省・司法省・科学関係歳出予算法案を9月15日に91対4で可決している。しかしながら、下院の類似歳出予算法案にはATP予算が含まれていないため、2006年度ATP予算の行方は未だ確実ではない。(Manufacturing & Technology News, September 20, 2005) 1:下院本会議は今年6月16日に、2006年度国務省・商務省・司法省・関連省庁歳出予算法案(下院第2862号議案)を418対7で可決し、これを上院に送付。上院歳出委員会は6月23日にRichard Shelby委員長の提出した代替案を上院案として承認。上院本会議では、上院歳出委員会から上程されたShelby代替案(やはり、下院第2862号議案と呼ばれる)を9月8日から審議していた。
9月23日号 エネルギー省、気候変動技術プログラム(CCTP)戦略プラン草案を発表 エネルギー省(DOE)が9月22日、気候変動技術プログラム(Climate Change Technology Program = CCTP)の戦略プラン草案を発表した。CCTPは米国の包括的な気候変動対応策の中の技術コンポーネントであり、これによって開発された技術は、今年7月末に発表された「クリーンな開発と気候の為のアジア-太平洋パートナーシップ (Asia-Pacific Partnership for Clean Development and Climate)」のパートナー諸国 …米国、オーストラリア、中国、インド、日本、韓国… の間で使用・普及される予定であるという。 CCTP戦略プランは、気候変動関連技術の研究・開発・実証・普及に戦略的な指針を提供し、更には、これらに充てられる約30億ドルの連邦政府予算を整理している。同戦略プランが掲げている6つの主要目標は下記の通り:
CCTP戦略プランは、上記6目標の達成に向かって確実に前進するよう、下記の7つの重要アプローチを挙げている。
CCTPでは一連のワークショップを開催して利害関係者と同プランを討議するほか、2005年11月まで一般からコメントを受け付ける予定である。最終的な戦略プランの発表は2006年になる。(DOE News Release, September 22, 2005; http://www.climatetechnology.gov/stratplan/draft/index.htm) 連邦研究開発予算の優先度評価メトリック作成の為、省庁間作業部会を発足させるホワイトハウス ホワイトハウス科学技術政策局 (Office of Science and Technology Policy = OSTP) のJohn Marburger局長が行政管理予算局 (Office of Management and Budget = OMB) と共に、連邦政府が資金援助した科学研究の効果を査定評価するため、省庁間作業部会を発足させる。Marburger局長は、科学技術研究と社会的影響の関係を明らかにするモデルの作成を狙っている。 省庁間作業部会は、今年7月8日にOSTPとOMBが合同発表した、2007年度の為の『行政府研究開発予算優先事項 (Administration Research and Development Budget Priorities)』という年次メモに基づいて設置されるもので、その目的は、(i) 研究開発(R&D)投資の影響を把握する新たな枠組みを構築し;(ii) この影響をモニター・評価する上で適切なデータ要素を特定し;(iii) 科学技術のグローバル化の影響を理解しようとする国際的取り組みに貢献し;(iv) 国家科学政策決定の土台を向上させることであるという。 批評家等は、今年4月の全米科学振興協会(American Association for the Advancement of Science) の年次会合でMarburger局長が行った基調講演がこの提案の原点になったと見ている。省庁間作業部会は国家科学技術会議(National Science and Technology Council)の所轄に置かれ、科学技術R&D予算のある連邦省庁がすべてこの部会に代表される予定である。(Manufacturing & Technology News, September 20, 2005) 研究開発予算増額を望むなら、ロビー活動は議会ではなくホワイトハウスを狙え Frank Wolf下院議員 (共和党、バージニア州) は、2007年度連邦予算で研究開発や科学教育予算の「大幅な増額」を希望する米国の業界は、米国議会にではなく、ホワイトハウスの4人の「重鎮」にアピールする必要があると指摘している。今月上旬にバージニア州ハーンドンで開かれた国際電子部品製造イニシアチブ (International Electronics Manufacturing Initiative = iNEMI) の革新技術リーダーシップ・フォーラムで講演したWolf下院議員は、業界の指導者等が、ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、Joshua Bolten 行政管理予算局(OMB)局長、Karl Rove次席補佐官というホワイトハウスの四大実力者に直接アピールすべきだと述べた。業界の要請を受けた議員による大統領へのアピールも、米国業界によるJohn Marburger科学技術政策局長を始めとする政府高官とのミーティングも、全てが徒労であり、前述の重鎮4名の支持無くしては科学技術予算の大幅増額はありえないというのがWolf下院議員の意見である。(Manufacturing & Technology News, September 20, 2005)
9月23日特別号 エネルギー省のVictor Der博士、FutureGenイニシアティブについて語る 無公害石炭火力発電所の建設を目標とするFutureGenイニシアティブは、ブッシュ政権にとって気候変動対策の主要要素の一つとなっている。同プログラムのデイレクターであるVictor Der博士が9月23日、E&ETVとのインタビューで、FutureGenイニシアティブの行方、プログラム予算、炭素隔離研究に携わる他諸国を同イニシアティブに引き込もうというDOEの努力等について説明した。Der博士の発言の概要は下記の通り。 ブッシュ大統領は、化石燃料利用が原因の温室効果ガス排出や気候変動問題に対応するため、FutureGenイニシアティブという長期プログラムにコミットしている。同イニシアティブは未だ初期段階にあり、現時点では、20数名のDOE職員が企画段階にある同プロジェクトに従事している。実際のところ、同プロジェクトは多大な書類作成を伴なう形成段階 (formative stage) にあるといえる。FutureGen施設は、DOEの石炭研究プログラムの一環として実施されている数多くの技術や研究に基づいて建設される。従って、FutureGenに関する(研究開発面での)仕事は、DOE傘下の国立研究所、および、国立研究所と産業界との連携で行われていると言える。プロセス面では、国家環境政策法(National Environmental Policy Act = NEPA)に沿って環境影響アセスメントを行う準備を始めたところである。 (E&ETV OnPoint, September 23, 2005)
9月22日号 西部州知事連合タスクフォース作成の報告書、太陽光発電のポテンシャルを高く評価 西部州知事連合(Western Governors Association = WGA)のソーラー・タスクフォースが、「クリーンかつ多様なエネルギー諮問委員会 (Clean and Diversified Energy Advisory Committee)」へのバックグランド情報として作成した『ソーラー・タスクフォースの報告書草案 (Draft Report of the Solar Task force)』を発表した。同報告書では、米国西部諸州で最も豊富な再生可能エネルギーである太陽エネルギーを利用して、2015年までに最高8ギガワットの発電容量を新設することが可能であると推定している。 報告書は、西部諸州における太陽光発電の広範な普及を妨げている最大の原因はコストであると指摘する。先頃法制化された「2005年エネルギー政策法」で、30%の連邦投資税控除が2年間認められたことは称賛に値するものの、2年という期間は集中型 (central-station) 太陽光発電事業を企画から運転に持ち込むには短かすぎるため、WGAは税控除を10年間に延長するよう米国議会に働き掛けるべきであると提言している。(Western Governors' Association Draft Report's Executive Summary, September 2005) 国連の報告書、二酸化炭素隔離で40%の排出削減が可能であると指摘 国連の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change = IPCC)が2003年に委託作成した報告書によると、二酸化炭素(CO2)を地中深くに隔離することで、2050年までに世界全体のCO2排出量を20〜40%削減することが可能であるという。同報告書は、今から2100年までの間に、2,200億から2兆2,000億トンのCO2を、1トン15ドルから75ドルで経済的に地中および深海に貯留することが可能であると指摘している。IPCCでは、9月22日から28日までモントリオールで開催される、京都議定書の今後を討議する会合でこの報告書の研究結果を公表する予定であるという。(Greenwire, September 20, 2005) 全米科学財団、ロボット技術の展示会を開催 全米科学財団(National Science Foundation)が9月16日に、ロボット技術分野における最新のブレークスルーを披露する展示会を開催した。主要な展示物は下記の通り:
(National Science Foundation News Release, September 6, 2005; September 16, 2005)
9月21日号 オハイオ州立大学の研究者、牛の胃から抽出したルーメン液を使った微生物燃料電池を設計 オハイオ州立大学の研究者等が、牛の第一胃(rumen)に外科手術で埋め込んだカニューラ(cannula)を使って抽出した約0.5リットルのルーメン液で、約600ミリボルトの電力を発生させたと発表した。ルーメン液自体がエネルギー源として使用されるわけではないものの、その液中および牛糞の中にも存在する微生物が電気を発生する優れた資源になりうるという。 オハイオ州立大学の研究チームは、微生物燃料電池(microbial fuel cell)を作るために、高さ約12インチ・直径約6インチのガラスチェンバー2つにルーメン液を満たした。陽極(anode)チェンバーと陰極(cathode)チェンバーは、陽子が陽極から陰極のチェンバーへと移動することを可能にする特殊素材によって分けられている。陽極チェンバーにはルーメン液とセルロースを入れ、陰極チェンバーには触媒兼酸化剤のフェリシアン化カリウムを入れ、更に、両チェンバーに電極として黒鉛の小片を加えたところ、このシステムの出力は約0.58ボルトに達したという。約4日後に電圧は0.2ボルトまで落ちたものの、研究者が新たにセルロースを追加することで、電圧を元の0.58ボルトに戻すことが出来たという。 同調査研究の結果は、首都ワシントンで8月31日に開催された米国化学会(American Chemical Society)の年次会合で発表された。(Ohio State University News Release, September 14, 2005) エネルギー省、温室効果ガス排出量報告計画の発効日をまた延期 エネルギー省(DOE)は、温室効果ガス排出量報告に関するガイドラインの発効日を現行の2005年9月20日から2006年6月1日に延期すると発表した。DOE温室効果ガス自主報告プログラム(Voluntary Reporting of Greenhouse Gases Program = VRGGP)の当局者によると、延期の主たる理由は、同報告プログラムへの参加者が情報提出に使用する用紙が2006年第1四半期の終わりまで有効とならないためであるという。 VRGGPは、1994年に「1992年包括エネルギー法」に従って創設されたプログラムであるが、ブッシュ大統領はプログラムの内容変更を義務づける指針を2002年に発布している。最も顕著な変更は、プログラムの基準年(baseline year)を1994年ではなく2002年にすることで、これは、強制的な排出上限計画が将来実施されることになっても、VRGGP参加者は2002年以前に達成した排出削減を取引可能な排出権として登録出来ないことを意味する。 DOEでは今年の3月に排出削減の報告方法を説明するテクニカルガイドライン (約300頁) を提案した際、一般からのコメント受付期間を5月まで延長すると発表していた。DOEのDavid Conover政策・国際問題担当次官補は、寄せられたコメントを踏まえてDOEのエネルギー情報局がテクニカルガイドラインを作成中であるため、それをガイドラインそのものに反映させるためにも、発効延期が必要になったと説明している。(Greenwire, September 19, 2005) 幹細胞の注入で、ネズミの脊髄損傷が治癒 カリフォルニア大学アービン校の研究チームは、重い脊髄障害のあるネズミに、ヒトの胎児脳から抽出した幹細胞を注入したところ、ネズミの歩行能力がほとんど回復したと報告している。この研究により、様々な種類の幹細胞が、損傷した神経細胞を治癒する力を持っていることが更に明白になったといえる。 この研究では、同じ脊髄障害を持つネズミを3グループに分け、第1グループのネズミに16〜18週目で堕胎された胎児の脳から抽出したニューロスフェア(neurosphere)と呼ばれる幹細胞を注入、第2グループには皮膚細胞を注入したが、第3グループは幹細胞注入治療を行わないままとした。注入の16週間後に、この3グループのネズミの敏捷性や脚の動きを比較したところ、第1グループのネズミが圧倒的に優れているという結果が出たという。また、ヒトの細胞を殺す有毒物質を第1グループの数匹のネズミに注入した実験では、ネズミの歩行能力が退化したという。 研究を支援した企業は臨床実験を来年にも開始することを希望しているが、食品医薬品局(Food and Drug Administration)では、臨床実験を行なう前に、幹細胞が注入後に誤った細胞に変わる可能性といった幾つかの疑問を解く必要があると指摘している。(Washington Post, September 20, 2005)
9月20日号 農務省、再生可能エネルギーに約2,100万ドルの助成 Mike Johanns農務長官が、再生可能エネルギーおよびエネルギー効率改善プロジェクトを支援する農村開発(Rural Development)推進プログラムで、全国32州150件のプロジェクトに約2,100万ドルのグラントを授与すると発表した。 今回選定されたプロジェクトは、風力、ソーラー、バイオマス、地熱、省エネルギーといった幅広い技術を網羅している。例えば、Wasatch Wind社がユタ州スパニッシュフォークで行う風力発電プロジェクトには、1.5メガワット級風力タワーを10基建設する第1フェーズへの支援として50万ドルが給付されるほか、アイダホ州ケッチャムのSynthetic Energy社には、商業用水素生成装置の電力源に使用する風力タービンの購入費として約20万ドルのグラントが与えられる。今回選定されたプロジェクトのリストはhttp://www.rurdev.usda.gov で閲覧可能である。(USDA News Release, September 14, 2005) ディーゼル自動車の排出抑制に役立つことが期待されるクリプトメラン パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)の研究者等が米国化学会(American Chemical Society)の第230回会合で、ディーゼル自動車の排出制御装置の劣化原因である有毒な酸化イオウの吸収剤としてクリプトメランが非常に有望であり、その二酸化硫黄(SO2)吸収能力は金属酸化物ベース吸収剤の10倍以上であると発表した。 PNNLの研究者達が、ディーゼルエンジンから放出される窒素酸化物(NOx)排出を抑制する為に最適化された条件下でクリプトメランの実験を行ったところ、クリプトメランはSO2を酸化する優れた触媒であることが明らかになったという。SO2はNOx捕獲装置や燃料電池を劣化させる原因であるが、クリプトメランを使用することでSO2が吸収され、NOx排出抑制装置の耐久性が向上することになる。 PNNLの研究者等はクリプトメランの更なる有効性・可能性 (SO2以外の有害物質を吸収する能力) を実証するために現在、研究パートナーを探しているという。(Mobile Emissions Today, September 15, 2005; PNNL News Release, September 1, 2005) 環境保護庁、自動車燃費の新測定方法を2005年末までに発表予定 環境保護庁(EPA)は先週、ハイブリッド自動車の実際の燃費がEPA発表数値を下回るという所有者からの苦情に応え、2005年末までに自動車燃費の新たな測定方法を提案する予定であると発表した。新提案は下記の点を考慮することになるという:
(Greenwire, September 19, 2005) Rensselaer Polytechnic Institute他の研究者等、磁気ナノダイアモンドを作成 Rensselaer Polytechnic Institute、ニューヨーク州立大学アルバニー校、米航空宇宙局(NASA)のAmes Research Center、および、フィリップ・モリス社の研究者達が、ナノダイアモンドの粒子に炭素イオンや窒素イオンを浴びせることによって、磁気ナノダイアモンドを創りあげた。 研究チームが、ナノダイアモンド粒子に窒素イオンもしくは炭素イオンを埋め込んだところ、イオン投与量が1014 cm-2以下の時には、窒素イオンも炭素イオンも同程度の磁気を発生したが、投与量がそれ以上の時には、窒素イオンで処理した粒子の方が炭素イオン処理粒子よりも高い磁化を示したという。 Rensselaer Polytechnic InstituteのPulickel Ajayan氏によると、今回の研究結果は磁気炭素材料をより規則的かつ効率的に製造する方法に繋がる可能性があるという。ナノダイアモンド粒子の磁化の価値は通常の磁石の磁化よりは遥かに低いものの、磁性を持つ炭素ナノ構造は高密度メモリー装置や量子コンピューター、MRI(magnetic resonance imaging)や薬剤投与等への応用が可能であると期待される。(nanotechweb.org News, September 15, 2005)
9月19日号 米航空宇宙局、月への有人飛行計画を発表 ブッシュ大統領は2004年1月の演説で、新宇宙探査政策の重要な第一歩として、2020年までに月への有人飛行を再開することを提唱したが、米航空宇宙局(NASA)はこれよりも2年早い2018年までに有人月面着陸を予定していると発表した。 NASAでは今年4月から、メインエンジンや固体ロケットブースターおよび外部燃料タンクといったスペースシャトルの主要部品を利用して搭乗カプセル (crew capsule) や発射装置を作る計画を錬ってきたが、Mike Griffin NASA長官他は9月14日に「Exploration Systems Architecture Study」という12ヵ年1,000億ドルの計画をホワイトハウス政策担当官他に提示した。このNASA計画では、月への有人飛行だけでなく、水素と氷が存在すると予想される月の南極に月面基地を建設し、それを有人火星探査への出発点とすることを想定している。 NASAでは、有人宇宙探査船(Crew Exploration Vehicle)の開発コストを55億ドル、打上げロケット(Crew Launch Vehicle)を45億ドル、125トンのペイロードを打ち上げ可能な大気圏離脱艦(heavy-lift launcher)の開発費を50〜100億ドルと見積もっている。(CNN, September 15, 2005) 燃料消費節減と温室効果ガス排出削減を狙った、米加貨物輸送パートナーシップ カナダと米国が、貨物輸送業界における車両の燃費向上と温室効果ガス排出の削減を目的とする研究開発活動、および、具体的プロジェクトで二国が協力し情報を共有できるようにする覚書に署名した。この新たなパートナーシップの下でまず取り組まれる共同活動には次のものが含まれる。
米環境保護庁(EPA)の見積によれば、この米加の提携により、年間4億4,000万ガロンの燃料が節約でき、二酸化炭素排出量も年間500万トン削減できるという。(EPA News Release, September 14, 2005; Natural Resources Canada News Release, September 14, 2005) カナダとインド、環境問題での協力強化に合意 アジア太平洋諸国訪問を続けるカナダのStephane Dion環境大臣が、2005年9月4日から6日にかけてインドを訪れた。討議の席で、カナダとインドの二ヶ国は、先進技術の推進のための相互協力をさらに深めることで合意に達した。両国は、グリーン技術開発を含む二国間環境フォーラムとクリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトに関する覚書の作成について検討を重ねることに合意している。(Environment Canada News Release, September 7, 2005)
9月16日号 下院に提出された、超党派の自動車企業平均燃費(CAFE)基準引上げ法案 下院科学委員会のSherwood Boehlert委員長(共和党、ニューヨーク州)とEd Markey下院議員(民主党、マサチューセッツ州)を始めとする超党派の下院議員16名が、25マイル/ガロン(mpg)という乗用車と軽トラック対象の現行企業平均燃費(CAFE)基準を2016年までに33mpgまで引上げることを義務づける法案(下院第3762号議案)を提出した。同法案は、CAFEの平均基準が33mpgである限りは、行政府が車両のサイズ毎に異なるCAFE基準を設定することを認めるほか、全米エネルギー政策委員会(National Commission on Energy Policy)が提案していた排出権取引制度 …33mpg以上のCAFEを達成した自動車メーカーが基準未達成の他企業にクレジットを売却できる制度… の創設も認めることになる。 同法案の支持者等は、この施策によって日間石油消費量が2025年までに260万バレル減少すると指摘している。また、ガソリン1ガロンを2ドルで計算した場合、大型のスポーツ多目的車(SUV)やピックアップトラックの所有者は使用年数期間に最低2,000ドル、ミニバン所有者は最低1,000ドルのガソリン代を節減することになるという。下院における同法案の可決は困難なものと見られているものの、支持者達は、ハリケーン・カトリーヌの影響で高騰したガソリン価格が未だに高値を続けているため、現状は以前よりも法案可決に有利となっている可能性があると指摘している。(Environment and Energy Daily, September 15, 2005; House of Representatives Press Release, September 14, 2005) 地球温暖化に関する米国内の論議に油を注いだ、ハリケーン・カトリーヌ ハリケーン・カトリーヌの被害は、地球温暖化の影響を証明する科学に関する米国内の討議を再熱させることになった。米国気候変動政策の方針変更を唱導する者達は、ハリケーン・カトリーヌは海面上昇と海温上昇に起因する大災害の悲劇的一例であると主張する。熱帯暴風雨の強度と海温上昇の間の強い関係は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者Kerry Emanuel氏が今年7月に発表した報告書で指摘されている。Emanuel氏は、過去50年間でハリケーンの破壊力が50%強まったが、その一因は海面温度の上昇であると結論づけている。 気候変動政策改変の支持者達は、ハリケーンの破壊力と地球温暖化の繋がりが討議されることになれば、「2005年気候管理法案 (Climate Stewardship Act of 2005)」が可決されるチャンスもあるものと期待している。一方、ブッシュ大統領の科学顧問であるJohn Marburger博士は、気候変動とハリケーンの強度の間に関連がある可能性を認めはしたものの、行政府が気候変動政策を変更する必要があるとは思わないと語っている。(Greenwire, September 15, 2005) Barack Obama上院議員、米国のエネルギー自立と持続可能なエネルギー利用について講演 未来の為の資源 (Resources for the Future) が9月15日に開催したフォーラムで、Barack Obama上院議員 (民主党、イリノイ州) が米国のエネルギー自立と持続可能なエネルギー利用について講演した。Obama上院議員は、化石燃料からの移行という面で、米国が他の先進工業国に遅れをとりつつあることを警告し、この現状を修正するためのオプションとして下記をあげた。
Obama上院議員はまた、保険料、特に自動車業界退職者の保険料が高騰している問題を取り上げ、自動車業界が節減した費用の最低50%を燃費の良い自動車製造に使用するという条件付きで、政府が自動車業界の退職者保険の10%を支払うことを提案している。(RFF Policy Leadership Forum, September 15, 2005)
9月15日号 無公害の発電・水素製造施設第1号を開発する為、米国7企業がFutureGen Industrial Allianceを結成 アメリカン電力、BHP Billiton、CONSOLエネルギー、Foundation Coal社、ケネコット・エネルギー社、ピーボディー・エネルギー、Southern Companyの7社が9月12日、「FutureGen Industrial Alliance」という非営利組織を結成したと発表した。この新同盟はエネルギー省(DOE)と提携して、官民パートナーシップにより、世界初の石炭利用無公害発電所 (275メガワット級) の設計・建設・運転を推進する予定であるという。 新同盟には、他の米国企業や外国企業の参加も可能であり、現に、中国最大の電力会社である中国華能集団公司(China Huaneng Group)が同盟への加入に関心を表明しているという。 FutureGen Industrial AllianceとDOEは現在、FutureGenに関する合意を完成させるために交渉中である。合意が達成すると、FutureGen施設の用地選定と施設設計の作業に入ることになる。(Global Warming Today, September 14, 2005; Peabody Energy Corp. News Release, September 13, 2005) バイオテクノロジーの教訓に学び、市民対象のナノテクノロジー啓蒙活動を計画する科学者達 ナノテクノロジーは現在、テニスボールやサンスクリーンを始めとする約700種の製品に使用されている。ナノテクノロジーの支持者等が、抗癌剤から水素燃料電池に至る多様な用途への可能性を称賛している一方で、一般消費者のナノテクノロジーについての理解は極めて低いことがアンケート調査により明らかになっている。 2005年8月に発表されたアンケート調査によると、700名を超える回答者の内で、ナノテクノロジーに関して幾らか知識があると答えたのは僅か16%にすぎず、25%はナノテクノロジーについて聞いたことがなかったという。同アンケート調査の共同著者であるウィスコンシン大学マジソン校のDietram Scheufele博士は、科学者は一般市民にアウトリーチする努力が必要であると語っている。 また、「Project on Emerging Nanotechnologies」というグループが先週発表したアンケート調査では、ナノテクノロジー (特に、医療用途) への関心が高い反面、政府規制当局者がリスクを正確に評価できるかについては市民の信頼度が極めて低いことを明示する結果がでたという。全米科学財団 (National Science Foundation) の推定では2015年には1兆ドルに達するというナノテクノロジー市場であるが、同グループのDavid Rejeski局長は、その成功は消費者が財布の紐を緩め、こうした新興技術を受け入れるか否かにかかっていると指摘している。 こうした状況下、英国政府支援の市民グループ「NanoJuly U.K.」、ウィスコンシン大学マジソン校の研究者が設立した「ナノテクノロジーに関するマジソン地域市民のコンセンサス会合 (Madison Area Consensus Conference on Nanotechnology)」、ノースカロライナ大学の「ナノテクノロジー市民学校 (Citizen's School for Nanotechnology)」のように、自ら率先して一般市民の啓蒙に携わる科学者が増えている。(Greenwire, September 13, 2005) ぎっしり詰まった議事日程のため、宙に浮いた幹細胞研究推進法案の審議採決 Bill Frist上院共和党院内総務 (テネシー州) が「幹細胞研究推進法 (Stem Cell Research Enhancement Act:上院第471号議案)」への支持を表明したことから、同法案の上院可決に期待が高まっているが、上院での審議および可決は決して確実であるとはいえない。 同法案の共同提案者であるTom Harkin上院議員(民主党、アイオワ州)のスポークスマンは票数について自信があると発言しているものの、幹細胞研究主導者のGordon Smith上院議員(共和党、オレゴン州)は上院が同法案の審議を開始するのは数週間もしくは1ヵ月先になるであろうと指摘している。 一方、Sam Brownback上院議員(共和党、カンザス州)を始めとする胎性幹細胞研究の反対者達は、胎芽の代わりに皮膚細胞や成人から幹細胞を抽出する方法を報告するニュースが8月に数件続いたことをとりあげ、米国民のコンセンサスは反対派である自分達の方に傾き始めていると主張している。 幹細胞研究推進法案や関連するその他法案の上院審議は、夏期休会明けに開始されるものと見られていたが、ハリケーン・カトリーヌ関連法案への対応が優先であるために、現時点では9月末になるのか、10月中旬になるのか、あるいはそれ以降になるのか予想がつかない状況となっている。また、上院本会議が胎性幹細胞研究を支援する法案を可決したとしても、ブッシュ大統領はそれに対して拒否権を発動すると断言している。(Roll Call, September 14, 2005)
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